更新日:2019/04/01
佐藤 卓哉(さとう たくや)/ 岡田 智広(おかだ ともひろ)/ 本間 俊介(ほんま しゅんすけ)/ 西原 英臣(にしはら ひでたか)
NTTネットワークサービスシステム研究所
5G時代には、5Gの特長である大容量ブロードバンド、大量セッション接続、超低遅延高品質などを活用したさまざまな新しいサービスの創出が期待されていますが、それらの新しいサービスを実現するためにはさまざまなサービス要件に応じた多様なネットワークが必要となります。そのような要求に対して迅速かつ柔軟にネットワークを提供することが課題となっています。
ネットワークスライシング技術は共通の物理基盤上にネットワークスライス(スライス)と呼ばれる要件の異なる仮想ネットワークを複数同時に構築・運用する技術です。物理的な設備を仮想的に分割可能な資源として管理し、それらを自在に組み合わせて必要な仮想ネットワークを構築します。従来の通信ネットワークは、高価な専用装置を用いており、構築等に時間を要しましたが、スライスでは比較的安価な汎用装置を用いて、設定を入れ替えることによってさまざまなサービスを迅速に提供できます。
本技術は5G時代のネットワークを支える技術として期待されています。NTTでは本技術を活用することで、サービスパートナーのそれぞれのニーズにあった要件のネットワークを迅速に提供することをめざしています。
サービスパートナーが求める多様な要件のネットワークを提供するためにはEnd-to-Endで一定の通信品質が確保できるEnd-to-Endスライス(E2Eスライス)が必要です。しかし、E2Eスライスを実現するためには、各々の異なったルールで管理されている複数の事業者網をまたいだ状態でスライスの構築や運用を行う必要があり、それが大きな課題となっています。NTTではその課題解決に向けて事業者網間の接続点にスライスゲートウェイ(SLG)を配備するアーキテクチャを提案しています(図1)。スライスゲートウェイはプロトコル変換やトラフィック振り分け、スライス間アイソレーション等のスライスのデータプレーンに求められる機能を提供します。網間の接続点部分に配備されたスライスゲートウェイが、それぞれの網の仕様に合わせた適切な変換などを行うことによって、仕様の異なる複数の網をまたいでスライスを運用することができるようになります。
現在、NetroSphere-PIT(1)の検証環境上にオープンソースソフトウェア(OSS)を利用してスライスゲートウェイを実装し、実証試験を進めています。スライスは、基盤ネットワークの仕様に応じて任意のプロトコルを用いて構築することが可能です。私たちは新技術であるSRv6(IPv6 Segment Routing)を用いたスライス構築の検討を進めています。SRv6はIPv6ネットワーク上で動作させることができ、セグメントルーチングによる経路制御が可能です。また、スライスにはさまざまな付加機能を盛り込むことができます。私たちは遅延保証(2)の付加機能を盛り込んだE2Eスライスを構築することによって、通信遅延の影響を受けやすい双方向型アプリケーションなどにおいてより良いユーザ体験を提供できることを確認しています。さらにそれらのスライスの構築や切り替え、テレメトリ技術によるスライスの運用状況確認等が実施可能なGUIのプロトタイプも開発しました(図2)。前述の成果についてはNTT R&Dフォーラム2018(秋)において動態デモの展示を行い、GUI画面から簡単な操作を行うだけでスライスの制御が行えることをサービスパートナーの皆様にも体験いただきました。
商用化を見据えた実証実験などを計画しており、それらの実施結果をフィードバックすることによってネットワークスライシング技術およびスライスゲートウェイ技術の精錬化を進めます。また、本技術の市販製品、デファクトOSSへの搭載を目標にグローバル標準化を推進します。…