更新日:2019/03/01

    テラビット級無線伝送をめざす大容量OAM多重伝送技術
    NTT未来ねっと研究所
    NTT先端集積デバイス研究所

    NTT技術ジャーナル2019年3月号:特集「将来の大容量通信インフラを支える超高速通信技術」より

    李 斗煥(りぃ どぅはん)†1/ 笹木 裕文(ささき ひろふみ)†1/ 八木 康徳(やぎ やすのり)†1/ 山田 貴之(やまだ たかゆき)†1/ 加保 貴奈(かほ たかな)†1/ 濱田 裕史(はまだ ひろし)†2

    NTT未来ねっと研究所†1/ NTT先端集積デバイス研究所†2

    研究背景とテラビット級無線伝送技術への取り組み

    これから実現される5Gにより、コネクティッドカー、VR(Virtual Reality)/AR(Augmented Reality)、高精細映像伝送を含むあらゆる分野で無線通信の利用は加速されます。モバイルトラフィックは、年率1.5倍で増加すると予想されており、このような傾向から、2030年代には、数百ギガビット級からテラビット級の無線伝送が必要であると考えられます。
    NTTは、将来の無線通信需要に備え、テラビット級無線伝送の実現をめざす研究開発に取り組んでいます。大容量無線通信の実現には、空間多重*1数の増加、伝送帯域幅の広帯域化、変調多値数の増加の3つの方向性があります(図1)。これらのうち、変調多値数を増やす方法は、すでに限界に達しつつあります。例えば、1度に10ビットの情報を伝送する「1024QAM(Quadrature Amplitude Modulation)」の2倍の容量を得るためには、1度に20ビットの情報を伝送する100万以上の多値変調が必要になり、このアプローチでの大容量化の実現は困難です。NTTは(準)ミリ波帯*2を用い伝送帯域幅を広帯域化するとともに、本稿で説明する軌道角運動量(OAM:Orbital Angular Momentum)*3の性質を持つ電波を使った空間多重数増加の研究に取り組んでいます。

    1. *1空間多重:複数のデータ系列を、空間的に独立な複数の電波を用いて、同時刻・同周波数帯において並列に伝送する伝送方法です。
    2. *2ミリ波・準ミリ波:ミリ波は、波長が1~10 mmと非常に短く、マイクロ波と同様に強い直進性があります。周波数帯域は30~300 GHzに相当します。準ミリ波は、波長が数cm程度のミリ波に近い電波の俗称であり、10~30 GHz付近の周波数帯域の電波のことをいいます。
    3. *3軌道角運動量:電波の性質として、位置座標とそれに共役な運動量の積で表される電波の持つ角運動量の1つで、異なる軌道角運動量を持つ電波は相関がないため、重ね合わせても独立に分離できます。
    図1 無線伝送大容量化に向けた研究の方向性
    図1 無線伝送大容量化に向けた研究の方向性

    OAM多重伝送の原理とNTTが考案したOAM-MIMO多重伝送技術

    OAM多重伝送技術

    OAM多重伝送技術とは、異なるOAMモードを持つ複数の電波にそれぞれ信号を乗せて無線伝送をすることで、同時に送信するデータ信号の数(多重数)を増加させる技術です(1)(2)。…

    ■参考文献

    1. (1)A. E. Willner:“Communication with a twist、”IEEE Spectrum, Vol.53, No.8, pp.34-39, 2016。
    2. (2)D. Lee, H. Sasaki, H. Fukumoto, K. Hiraga, and T. Nakagawa:“Orbital angular momentum (OAM) multiplexing: An enabler of a new era of wireless communications、”IEICE Trans. Commun., Vol.E100-B, No.7, pp.1044-1063, 2017。

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