更新日:2018/12/01
※記事本文中の研究所名が、執筆・取材時の旧研究所名の場合がございます。
宮原 理夏(みやはら りか)†1/ 榎本 普美(えのもと ふみ)†1/ 小池 嘉久(こいけ よしひさ)†1/ 北牧 聖一朗(きたまき せいいちろう)†1/ 宮武 隆(みやたけ たかし)†2/ 冨永 隆(とみなが たかし)†3
NTTコミュニケーションズ†1/ NTTサービスエボリューション研究所†2/ NTT研究企画部門†3
金融業界においてはフィンテックと呼ばれる金融技術の発展により大きく業務の変革が進んでいます。AI(人工知能)による与信審査やチャットボットによるお客さま自動応対、また、ブロックチェーンと呼ばれる新しい情報基盤技術を利用した仮想通貨による国際送金など多岐にわたり技術革新が行われています。
NTTでは約1年間にわたりNTTコミュニケーションズと連携し株式会社三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)が進めるデジタライゼーション変革に関して共同検討を実施してきました。NTT研究所の各種技術を紹介、体感いただき銀行業務での活用の可能性について共同で検討を行い、将来的に研究成果をビジネス化する際の知見の蓄積を相互にめざす営みです。
MUFGがNTT R&D技術に興味を持っていただくきっかけとなったのがKirari!という超高臨場感通信技術です。Kirari!は遠隔地でもまるでその場に人がいるかのような高臨場感映像を伝送する技術の集合体です。スポーツや歌舞伎、コンサート中継等のエンタテインメントでの活用を指向して技術開発を行ってきました。MUFGに本技術を紹介した際に対外イベントや会議、店舗での来店顧客の対応等に利用できないかとの提議をいただき、MUFGにおける新しい銀行サービスの提供に向けてNTT研究所の技術活用の可能性について幅広く議論する共同検討を開始しました。
現在、メガバンクをはじめとする銀行においては経営の効率化を目的として、お客さまにて各種手続きをセルフで対応いただく次世代店舗を増やし、さらにはご自宅で各種手続きが完結する新しい銀行サービスの提供をめざしています。例えば、来店いただいたお客さまに対して通常のビデオ通話ではどうしても無機的なコミュニケーションにならざる得ない面があり、Kirari!やcorevo®などさまざまなNTTの先端技術を利用することで、人とのつながり感や温かみを維持したまま遠隔地からお客さま対応できるのではないか、との可能性を感じていただきました。
2017年度に「銀行サービスの将来像実現に向けた共同検討」というテーマでワークショップ形式のディスカッションを行いました。MUFGからは銀行業務のデジタルトランスフォーメーションを推進するデジタル企画部を中心に20名程度のメンバーに定例会に参画してもらい、各種検討を合計8回実施する大規模なものとなりました。
この検討においては、「新しい映像体験」と「コミュニケーションエンジン・ツール」という大きく2つの軸でNTTの技術紹介と活用の可能性について意見交換を行いました。
1点目の「新しい映像体験」においては、Kirari!を利用した来店顧客への対応についてKirari! for Mobileと呼ばれるTVサイズ型のKirari!を利用した共同展示を実施しました。Kirari!の技術により疑似的に立体に投影されるMUFGのキャラクターであるバーチャルエージェントが顧客への応対をする体感型のコンセプト展示です。シンガポールのフィンテックイベント:Singapore FinTech Festival 2017やCEATECH JAPAN 2017にて展示し、好評をいただきました。
また、「コミュニケーションエンジン・ツール」においては、音声認識技術や合成音声技術、インテリジェントマイクなどNTTが長年培ってきた音声に関する研究成果を紹介し、銀行業務への活用方法についてディスカッションを行いました。例えばインテリジェントマイクと音声認識、テキスト化技術を連携し、来店顧客への対応時の音声データをテキスト化することにより蓄積分析し、優良なお客さま対応例を幅広く展開することで、お客さまの満足度向上や業務効率化が期待できるのではという仮説を導き出しました。
さらに、アノテーション技術と呼ばれる既存システムに影響を与えることなくシステム画面に操作説明や注意喚起を促すメッセージを表示する技術の紹介では、今後ペーパーレス化やセルフ化を進めていく銀行手続きにおいて、高齢者や外国のお客さまへのシステム操作サポートとして活用できるのではという具体的な利用シーンについて意見を得ることができました。
このように一連の共同検討会の実施をとおして、MUFGの方とのリレーション強化を図り、今後も連携して金融業界におけるデジタルトランスフォーメーションを推進していきます(図1)。
NTT、NTTコミュニケーションズでは今回の共同検討により得られた知見を最大限に活用し製品化、サービス化を進めています。…