更新日:2018/10/01

    機械学習を用いた任意背景リアルタイム被写体抽出技術
    NTTサービスエボリューション研究所

    ※記事本文中の研究所名が、執筆・取材時の旧研究所名の場合がございます。

    NTT技術ジャーナル2018年10月号:特集「超高臨場感通信技術Kirari!」より

    柿沼 弘員(かきぬま ひろかず)/長尾 慈郎(ながお じろう)/宮下 広夢(みやした ひろむ)/外村 喜秀(とのむら よしひで)/長田 秀信(ながた ひでのぶ)/日高 浩太(ひだか こうた)

    NTTサービスエボリューション研究所

    はじめに

    映像中から人や物体の正確な領域を把握することは、高品質な画像編集や合成を実施するうえで必須の技術のため、コンピュータビジョンにおける主要な研究テーマの1つです。超高臨場感通信技術Kirari!においても、正確な被写体領域を抽出することは擬似3D映像提示を行い、高い臨場感を得るために必須となります。NTTサービスエボリューション研究所では、任意背景リアルタイム被写体抽出技術(1)において、グリーンバックなどのスタジオ設備を用いずに試合会場や演技している舞台映像からリアルタイムに被写体の領域のみを抽出するシステムを提案しています。本稿では、そのシステムを①従来では判別できなかったよりわずかな特徴量の差までも判別する機械学習を導入すること、②赤外線光などを用い抽出したいオブジェクトの特徴量を生成すること、でより正確に被写体領域を抽出できるようにシステム開発しましたので紹介します。

    機械学習を用いたリアルタイム被写体抽出フレームワーク

    リアルタイムに対象領域を抽出する処理には背景差分法が知られています。背景差分法は、入力画像と背景画像との差分をとり、しきい値処理することで変化のあった被写体の領域として抽出するため、高速な処理ができ、事前の準備が少ないことから広く用いられてきました。しかし、適切なしきい値決定は難しく、また、背景の変化などに対応できないなどの問題がありました。そこでNN(Neural Network: ニューラルネットワーク)を用い、入力される特徴ベクトルを別の特徴空間に変換し、識別を行う被写体抽出方法を開発しました。NNを用いることで、識別のための特徴空間はあらかじめ与えられる教師データによりNN内で決定され、より適切な特徴空間に自動で変換されることが期待されます。また、識別に用いる入力も、対象の画像だけでなく、リファレンスとなる被写体の特徴を有した画像や、時間の異なる画像や、領域情報、赤外線映像などを入れても、NN内で適切に特徴空間に変換され、背景や被写体の高次な特徴量を用いた被写体抽出が実行できるため、背景の変化などにロバストになることが期待されます。
    開発システムのワークフローを図1に示します。開発システムは2段階の被写体抽出を行います。1段目では、被写体領域を粗いマスク画像(TRIMAP*1)として抽出し、2段目ではTRIMAPを頼りにしたマッティング処理*2にて正確な被写体領域を抽出します。機械学習は1段目のTRIMAPを導出するのに導入しました。

    図1 リアルタイム被写体抽出フレームワーク
    図1 リアルタイム被写体抽出フレームワーク

    機械学習処理は事前学習処理と適用処理に大別できます。事前学習処理は、教師データからNNモデル中のパラメータを学習させることを目的として実行されます。事前学習処理フローを図2に示します。事前学習処理では、まず、教師データを用意します。被写体の含まれない背景画像と被写体の含まれるサンプル画像をあらかじめ取得しておき、正解となるマスク画像を作成します。次に、作成したマスクの前景領域に対応するサンプル画像中の注目画素と、背景画像中の対応画素を組み合わせたものを入力特徴ベクトルとし、その組合せが前景領域であるとして学習させます。また同様に、マスクの背景領域に対応するサンプル画像中の注目画素と、背景画像中の対応画素の組合せについても、入力特徴ベクトルが背景領域であるとして学習させます。このようにして、ある入力注目画素に対応する背景画素の組合せに対して、それが前景領域であるか背景領域であるかを識別するNNモデルを得ます(図2(a))。しかし、NN処理は一般に演算量が多いことから、NN演算処理をLUT(Look Up Table: ルックアップテーブル)実装することで高速に処理します。そこで、入力特徴ベクトルを量子化処理によって少ない階調数に削減し、量子化された入力特徴ベクトルのすべてのNN出力組合せをLUTとして保持します(図2(b))。なお、図2では分かりやすいようにRGBの各画素について行う処理を記載しましたが、画像位置情報を入れるなど入力ベクトルは色情報に限定されません。…

    図2 事前学習処理
    図2 事前学習処理
    1. *1TRIMAP: 既知の領域と未知の領域を示した領域マップ。既知の前景領域を白、既知の背景領域を黒、未知領域を灰色に設定します。
    2. *2マッティング処理: 被写体を抽出するアルファマスクを導出する処理。アルファマスクは0から1までの値を持ち、入力画像に掛け合わせて抽出映像が得られます。

    ■参考文献

    1. (1)長田・宮下・柿沼・山口:“任意背景リアルタイム被写体抽出技術、” NTT技術ジャーナル、Vol.29,No.10,pp.33-37,2017。

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