更新日:2024/09/05

メンブレンフォトニクス技術によるスーパーコンティニュウム光源先端集積デバイス研究所

目次

概要

電気的、光学的特性に優れた材料をコアとし、その周囲を屈折率差の大きい低屈折率クラッド材料で覆い、高い光閉じ込めを得ることでコア材料の特性を最大限引き出すメンブレンフォトニクス技術の研究を進めています。特に、優れた非線形光学材料である化合物半導体:AlGaAs(ヒ化アルミニウムガリウム)をコア、クラッドをSiO2(二酸化シリコン)とするメンブレン導波路技術によって、超広帯域コヒーレント光「スーパーコンティニュウム光」を超小型デバイスで、高効率に生成できます。この技術をベースに、既存の光干渉計・波長フィルタ・受光器等の技術を組み合わせ光集積回路として実現することを目指しています。

背景・従来課題

持続的な社会の成長に向けて、GX(グリーントランスフォーメーション)やDX(デジタルトランスフォーメーション)を支えるハードウェア技術の進化が強く求められています。メンブレンフォトニクス技術はシリコンフォトニクス技術の概念をさらに発展、進化させ、電気的、光学的特性に優れた旧来の光デバイス材料にメンブレン構造を付与し構造を抜本的に変革することで、これまで実現困難であった小型、高効率、高機能、集積型光デバイスの実現が期待され、世界的に注目されています。例えば、スーパーコンティニュウム光や周波数コム光(Optical frequency comb: 複数の波長で櫛状に並んだ光)といった高機能光生成のために、近年Si(シリコン)やSiN(窒化シリコン)をコアとする導波路が用いられてきましたが、低い非線形光学係数、非線形光学吸収の存在、光閉じ込めの制約等によって、性能向上には限界がありました。

本技術のアドバンテージ

  • 高い非線形性光学係数材料への光閉じ込め増大による極限性能活用
  • 小型、高効率な可視~中赤外域にわたる広帯域光生成

利用シーン

  • 広帯域一括分子分光による環境ガスセンシング
  • 非線形顕微鏡やハイパースペクトルLIDAR等の先進イメージング

解説図表

DT0032_1.jpg

技術解説

AlGaAsは様々な材料の中でもトップクラスの高い3次非線形光学係数に加え、2次非線形光学効果も同時に有するという特異な性質を有します。また高度なAlGaAs結晶成長技術があれば、Siで問題となっていた非線形吸収によるスーパーコンティニュウム光帯域拡大限界の問題も解決できます。本技術では高品質AlGaAs結晶成長技術、AlGaAs成長基板とSiO2/Si基板の直接接合技術、低損失導波路設計・作製技術を開発し、さらに低損失なファイバ結合を実現するスポットサイズ変換器集積技術も開発しました。これにより、12 pJ/pulse(入力ファイバ内)の励起レーザ光(中心波長2150 nm)を3 mm長の導波路に入力することで、波長880nm~2180nm(-40dB基準)のスーパーコンティニュウム光の生成に成功しました。ここでは励起レーザ波長を中心とした3次非線形光学効果による波長変換光の生成に加えて、励起レーザ光波長の1/2以下の波長帯における2次非線形光学効果による波長変換光も生成しており、AlGaAsの特性を最大限活用したスーパーコンティニュウム光源となっています。これまで報告されているスーパーコンティニュウム光源の中でFigure of merit (FOM = Δv/L/Ppeak, Δv : スーパーコンティニュウム光帯域、L: 導波路長、Ppeak:励起光ピークパワー)を基に本技術を位置づけると、唯一FOM=5000を超え、世界最高性能を有する小型、高効率、広帯域なスーパーコンティニュウム光源が実現できていると言えます。この小型、高効率性によって励起レーザを含めた将来の光集積回路化が期待でき、また広帯域性によってガスセンシングを始めとする様々なデバイス適用が期待されます。

担当部署

先端集積デバイス研究所 機能材料研究部

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