概要
近年、シフトワークや不規則な生活習慣等による不眠や起床困難など睡眠の質の低下が問題となっています。要因の一つは、ホルモンの分泌等を調整している体内リズムの乱れによるものと考えられており、その対策としては体内リズムの可視化による調整が重要です。本稿では、肌に貼り付けるだけで体内リズムを可視化できるウェアラブル深部体温センサ技術とその応用について紹介します。
背景・従来課題
脳をはじめとする臓器など体の深い部分の温度(深部体温)は周囲の環境によらず約1日の周期でわずかに変化し、体内リズムの指標とされています。この深部体温を測定するためには、温度センサを直腸に挿入して測定する必要があり、日常生活での測定は困難でした。そこで、肌の温度や熱の流れ(熱流束)から深部体温を推定する技術が研究されてきましたが、周囲の環境に影響されやすく測定精度が低いため、体内リズムを可視化できませんでした。
本技術のアドバンテージ
- 外気の影響を抑制するためのセンサ内部の独⾃構造と信号処理アルゴリズムにより⽇常⽣活環境においても直腸温度センサと同等の相対値測定が可能であり、体内リズムの可視化が可能
- 体内リズムを客観的に可視化できることで、これまで睡眠サポートサービスではできなかった体内リズムに基づくレコメンドなどのサポートが可能
- 肌に貼り付けるだけのコイン⼤の⼩型センサはBLEで外部端末にデータを送信でき、専⽤ソフトにより⾃動で体内リズム解析が可能
利用シーン
- シフトワーク等で睡眠に課題を抱えている方の体内リズムの乱れを検出して、体内リズムを整えるための行動変容を促したり整えたりするサポート
- 海外出張などにより時差のある地域へ移動する際に、渡航先の時間や帰国する日本時間への速やかな体内リズムの調整サポート
解説図表
技術解説
肌の温度(皮膚温)と体の深部から伝わる熱の流れ(熱流束)から深部体温を推定します。従来は、⾵などの周囲環境の変化により⽣じるセンサ周囲へ熱が逃げてしまう現象のため熱流束を正確に測定できませんでした。この熱の逃げを抑制するために、NTTではトポロジー最適化という⼿法を⽤いてセンサ内部に独⾃の構造を設計し、熱流束を正確に測定可能にしたことで体内リズムを可視化できるようになりました。本センサと直腸温度センサを同時に⽤いて1⽇測定した比較では、本センサで推定される深部体温と直腸温度の推移が良く⼀致しました。
担当部署
先端集積デバイス研究所 アクティブ・ライフ基盤研究部