更新日:2025/09/29
NTTでは、Si(シリコン)基板上へのInP(インジウム燐)系薄膜の直接接合・結晶成長技術を開発し、Si基板上の異種材料・光電子回路融合に向けた集積化技術(メンブレンフォトニクス技術)の開発を行っています。本メンブレンフォトニクス技術にて、超低消費電力で動作する単一モード直接変調薄膜DFBレーザや、世界最小しきい値電流で駆動するフォトニック結晶レーザ、超高効率キャリア蓄積型光変調器などを実現しました。これらの技術を応用し、現在もっとも電力を消費している情報通信機器間の電気通信を光通信に置き換えることで大幅な省電力化が期待できます。
近年、FTTHなどのブロードバンドサービスやスマートフォンの爆発的普及に伴い、情報処理量が急激に増大しています。これにつれて、消費電力も膨らむことが想定され、特に情報処理量、消費電力量が膨大になるデータセンタ内/間やコンピュータ内などの短距離通信では、低消費電力化・低コスト化を同時に実現する光デバイスの開発が必須となっています。メンブレンフォトニクス技術は、光電融合により、これを実現できるプラットフォームとして世界的に注目されています。

現在の光デバイスにアクティブ光材料として広く用いられているInPは、その性質上基板の大口径化が難しく、またレアメタルを含むため基板が高価であるという本質的課題を抱えていました。そこで本研究では、ウエハ直接接合によってSi基板上にSiO2を介してInP薄膜(メンブレン)を形成する技術を開発しました。この技術を基盤として、シリコンフォトニクスと化合物半導体薄膜を組み合わせたメンブレンフォトニクスによって、光デバイスの抜本的な低消費エネルギー化・低コスト化が期待できます。
この異種材料融合技術とSi微細加工技術により作製したメンブレンDFBレーザでは、消費電力:132 fJ/bit、伝送距離:10 kmの単一モード直接変調駆動を実現しました。この値は、主に短距離通信で使われている面発光レーザ(VCSEL)と同等以下の電力であり、長距離通信用途では例がない低消費電力です。さらに、パッシブ光回路との集積技術を用いてアレイ回折格子(AWG)を集積し、メンブレンDFBレーザで波長多重通信を実証しました。また、フォトニック結晶レーザでは、31 μAというオンシリコンレーザにおいて世界最小閾値を達成しました。そして、同技術を光変調器にも適用し、変調効率(半波長電圧と変調領域の長さの積 VπL):0.09 V cm、挿入損失1.0 dBという従来型Si変調器を大幅に上回る特性を実現しました。
Si
Silicon(シリコン)
InP
Indium-Phosphide(インジウム燐)
DFB
Distributed-feedback(分布帰還型)
LEAP
Lambda-scale Embedded Active region Photonic crystal(波長サイズ埋込み活性層フォトニック結晶)
DBR
Distributed Bragg Reflector(分布ブラッグ反射鏡)
DR
Distributed Reflector(分布反射鏡)
SSC
Spot size converter(スポットサイズ変換器)
LSI
Large-scale integration(大規模集積化)
VCSEL
Vertical cavity surface emitting laser(垂直共振器面発光レーザ)
先端集積デバイス研究所 機能材料研究部