更新日:2020/06/30

    磁性触覚印刷技術NTTコミュニケーション科学基礎研究所

    概要

    磁性触覚印刷技術「マグネタクト」は、非常に簡素な構成でさまざまな凹凸触覚刺激を提示する触覚提示技法です。触覚提示に使われるのは2枚の磁性ゴムシートのみ。シート上に書き込まれた詳細な磁性パタンにより、シートどうしをこすり合わせたとき、シート表面は平らであるのに、まるでボコボコとした凹凸がシート間にあるかのような感覚を生み出します。磁性パタンを変えることで多様な凹凸感を提示可能でありながら、触覚提示には電源を必要とせず、一度書き込まれた凹凸感は長期間保持されるため、おもちゃや本など、触覚コンテンツの幅を広げる展開が期待されます。

    背景・従来課題

    従来の触覚提示は、モータやスピーカ、超音波や電磁力を使った「情報ディスプレイ型」と、紙や樹脂、金属を用いて形状や質感に触れる「マテリアル型」に大きく分けることができます。そのどちらにも利点があり、例えば前者は動的制御や機能拡張性に、後者は電気や配線を必要としないことからメンテナンスコストの低さに利点があります。一方で、前者は装置の複雑さに、後者は提示する触覚を変えられない拡張性の乏しさに課題がありました。

    これに対し本研究では、一般的なマテリアルである磁性ゴムシートにパタン着磁を施すことで凹凸感を制御可能にし、双方の利点を併せ持つ「情報をディスプレイできるマテリアル」を実現しました。特に、磁性パタンによって複数触覚提示や選択的触覚提示を可能にした点は、本研究の大きな貢献のひとつです。

    本技術のアドバンテージ

    • 詳細着磁可能な簡易着磁手法の考案により、触覚提示に強度変化や選択的触覚提示などの機能性を付与
    • 着磁する磁性パタンの組み合わせから、提示する凹凸感の粒度や強度を設計する手法を考案
    • 応用として触覚絵本や触感玩具など、機能性と簡便性を併せ持つ触覚提示コンテンツを作成可能

    利用シーン

    • 絵本や玩具に触覚を付加:一度着磁すれば磁性パタンは半永久的に保存されるため、「触覚絵本」をつくれば、持ち運んで好きな場所で絵と触覚を楽しむことも、本棚にしまうこともできます。
    • 大きな平面も低コストで触覚提示面に:床面や壁面、家具や道具に磁性シートを貼るだけで、特定の靴や手袋、道具を持った対象にのみ凹凸感を提示することができます。
    • ユーザが自ら触り心地をデザインする「触覚DIY」の手法として:素材の身近さと機材構成のシンプルさは、触覚コンテンツを創造するツールとしての利用にも適しています。

    解説図表

    パタン着磁により平面上に凹凸感を提示

    技術解説

    一様のパタン着磁を行った2枚の磁性ゴムシートを重ねると、シート間にはシート上のS極とN極により引力および反発力が発生します。それら垂直方向の力は、磁性シートを動かそうとする指腹に対しては横方向の抵抗力、または推進力となって現れます。これらの水平方向の応力が連続して提示されると、人間はそこに「凹凸がある」と知覚してしまう触錯覚現象があります。本研究ではその触錯覚を利用し凹凸感提示を行っています。これにより実際には平面であるシートを用いての凹凸触覚表現が可能になりました。

    さらに提示する凹凸感の位置、向き、サイズは磁性シート上に書き込む磁性パタンによって決定されるため、様々な凹凸感を設計することができます。パタンピッチと互いのシートの相対位置から、シート上のS極/N極間に発生する引力/斥力の相対比率は算出することができるため、提示される凹凸感の空間周波数および強度は、計算によって簡易に求めることができます。

    これを応用することで、たとえば、1片の磁性シートAを他方の磁性シートB、C、Dの上でこすったとき、それぞれのシート上で提示される凹凸感の強度・粒度を全く異なるものにすることができます。また、磁性シートAは磁性シートA’上でのみ、磁性シートBは磁性シートB’上でのみ凹凸を提示する、というように選択的な触覚提示を行うような設計も可能です。

    担当部署

    NTTコミュニケーション科学基礎研究所 人間情報研究部

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