更新日:2023/11/30

通信路の伝送容量拡大・消費電力低減技術NTTアクセスサービスシステム研究所

目次

概要

伝送容量の拡大に向けて検討されているマルチコアファイバ(MCF)技術を増幅用光ファイバに適用し、主要な通信波長帯であるC帯(波長1550 nmの近傍)においてマルチコア一括増幅を実現することで、従来技術に比べ消費電力を67%低減できることを世界で初めて実証しました。本成果により、MCFを用いた大容量化と省電力化の両立性を見出しました。

背景・従来課題

データ通信サービスの高速化・多様化に伴い、伝送容量も指数関数的に増大しており、MCFなどの空間分割多重技術を用いた更なる伝送容量の拡大が検討されています。しかしながら、現状の光増幅方式ではマルチコア化による伝送容量の拡大に伴い、長距離光通信で必須となる光増幅器の消費電力も増大してしまうという課題がありました。

本技術のアドバンテージ

  • 光ファイバ断面全体に励起光を入射して断面内の複数コアを伝搬する全ての信号光を一括で増幅するクラッド励起技術を用い、励起光レーザーの台数を削減
  • 増幅用光ファイバの外径(クラッド直径)とコア直径を、それぞれ縮小および拡大することで、コアのクラッドに対する面積比率を最大化し励起光の使用効率を最大化
  • 光増幅に使用されず無駄になる励起光損失および残留励起光を低減するためのデバイスを採用し、さらに光増幅の効率を高めることに成功

利用シーン

  • 光増幅器を用いる長距離中継光ファイバ伝送路

解説図表

技術解説

通信容量は年々指数関数的に増大しており、2020年代には従来の光ファイバの通信可能容量限界が顕在化するとされています。これに対し、マルチコアファイバなどの空間分割多重技術による伝送容量の拡大が検討されています。しかしながら、現状の光増幅方式では伝送容量の拡大に伴い、長距離光通信で必須となる光増幅器の消費電力も増大してしまうという課題がありました。本課題に対し、光増幅器に複数のコアを一括で増幅するクラッド励起技術を適用することで、増幅のために必要となる励起光レーザーを複数コアで共有できるため、既存の単一コア構造を用いた光増幅技術に比べ省電力化が実現できると期待されていました。しかしながら、従来の光増幅器の設計ではクラッド励起技術における励起光から信号光へのエネルギー移行効率が低く、期待されている省電力性が得られていませんでした。
本研究では、増幅用光ファイバの断面構造の最適化(コア面積比率の最大化)、及び光増幅器構成の最適化による励起光損失の最小化の2つの要素技術を用い、従来技術に比べ消費電力を67%低減できることを世界で初めて実証し、MCFを用いた容量拡大技術に省電力化の付加価値を見出しました。

用語解説

空間分割多重技術
これまで光ファイバ1本あたりに1つであった光の伝搬を複数に拡張するための技術。例えば、1本の光ファイバの断面に光の通り道であるコアが複数あるマルチコアファイバがあり、伝送路光ファイバだけでなく、増幅用光ファイバにもマルチコア構造が適用可能です。
https://group.ntt/jp/newsrelease/2017/08/08/170808b.html
光増幅器
光ファイバ中を伝搬する光は距離によって減衰していきます。数百~数千kmの光ファイバ通信を可能とするために、減衰した光を増幅し次の光ファイバに中継させるための装置が光増幅器です。一般に、エルビウムという元素が添加された増幅用光ファイバ(エルビウム添加光ファイバ)に励起光を入射させることで信号光を増幅させます。
https://group.ntt/jp/topics/2023/01/24/2023_japan_prize.html
励起光
増幅用光ファイバ中で信号光を増幅するために入射する光です。一般的に信号光(1550 nm付近)とは波長の異なる980 nmの光を用います。

担当部署

NTTアクセスサービスシステム研究所  アクセス設備プロジェクト

関連するコンテンツ