更新日:2023/09/29

量子アニーリングマシン対応電波伝搬シミュレーションモデルNTTアクセスサービスシステム研究所

目次

概要

無線通信エリア推定に必須となる電波伝搬シミュレーションを世界最高速度で可能とする技術を開発しました。

背景・従来課題

近年、無線システムに要求されるユースケースは複雑な環境へと拡大しています。このような複雑な環境においても安定した通信品質を維持するためには、状況の変化に即応できる高精度な電波伝搬シミュレーションが必要です。
これまで電波伝搬シミュレーション手法として広く使われているレイトレース法(※1)のアルゴリズムは、送受信アンテナ間の電波が飛ぶ伝搬路探索が基本となります。そして、距離による電波の減衰のほか、反射や回折などによって発?する付加損失が考慮されます。マルチパス環境では、ひとつひとつの伝搬路に対してこれら伝搬路探索と反射や回折などの作用について計算を行う必要があります。

本技術のアドバンテージ

  • 超高速電波伝搬シミュレーション
  • 6G/IOWN時代における無線を活用した新たなサービス創出への寄与

利用シーン

  • 電波の散乱回数を従来よりも大きく設定できることにより、基地局配置の一層の適正化とそれに付随する省電力化
  • 産業用ユースケースなどの複雑な環境においてリアルタイムレベルかつ無線の品質推定の実現

解説図表

技術解説

マルチパス環境においては、送信アンテナから直接届く電波のほか、複数の伝搬経路を経由した電波が到来し、それらが合成されたものが伝搬損失となります。レイトレース法では与えられた条件下で伝搬損失の小さい主要な伝搬経路を高速に見つけ出すことは、計算量が膨大となることから、現実的には不可能でした。
近年、最短経路探索問題のような組合せ最適化問題に対して超高速処理が可能なアニーリングマシンが既に実用化され、注目が集まっています。そこで、レイトレース法のような伝搬損失計算を、一般的な出発点からN地点を経由して到達点に至る最短経路探索問題と組合せることで伝搬損失が最小となる経路を逐次探索する問題に帰着させました(図1)。そして、伝搬の基本現象である電波の散乱現象をアニーリングマシンで実行可能なQUBO(Quadratic Unconstrained Binary Optimization, 二次無制約二値最適化)形式で記述することに成功しました。
今回技術確立した伝搬QUBOモデルの有効性を明らかにするために、構造物を水平面内に2次元配置し、シミュレーテッドアニーリング法を用いて動作検証を行いました。総当たり探索と伝搬QUBOモデルによる経路探索で伝搬損失が小さい順に結果を並べたところ、2つの探索結果は完全に一致することを確認できたことから、伝搬QUBOモデルの有効性が確認できました(図2)。また、従来は現実的な時間で計算不可能となる組合せ数でしたが、本モデルをシミュレーテッドアニーリング法に適用することで計算が完了したことから、計算時間削減の効果を確認できました(図3)。

用語解説

レイトレース法
送信点から受信点までの電波の伝搬経路を幾何学的な光線として近似的にモデル化することにより、受信電力などの電波伝搬特性を求める手法
アニーリングマシン
最適化問題の近似解を求めることに特化したコンピュータの一種
QUBO
2次式の値が最小になるように各変数に0と1のバイナリ変数割り当てを求める2次多項式問題
シミュレーテッドアニーリング法
確率的探索を用いて最適化問題を解く汎用近似解法の一つ
FDTD法
Finite-difference time-domain method。マクスウェルの方程式を差分方程式に展開して逐次計算をすることで、電場と磁場の値を数値的に得る電磁界シミュレーション方法の一つ。
統計モデル
測定データなどの統計的な処理により電波の挙動を数式化したもの

担当部署

NTTアクセスサービスシステム研究所 無線アクセスプロジェクト

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