循環システムのモデル結合

研究の背景

私たちは、サイバー空間上に大規模・高精度に再現した地球環境と社会のデジタルツインを用いて、自然・社会・経済の間に起こる影響を分析し未来をシミュレーションするための、コンピューティングに関する研究開発を行っています。将来的には、自然と社会・経済の調和した関係が持続可能となるような、個人や企業の行動の選択肢を示すことを目指しています。
地球環境社会の包摂的循環のシミュレーションシステムには、再現したい循環に登場するそれぞれの専門領域で開発されている気象、河川、経済などの様々なモデルを組み合わせて連携動作させる必要があります。私たちは、連携動作に必要な要素技術(大規模計算処理技術)の研究開発だけではなく、実際に複数のモデルを結合してオンライン・オンデマンドシミュレーション可能なシステムを実装しながら、将来の計算処理基盤を見据えた研究課題に取り組んでいます。
ここでは、私たちの大規模計算処理技術の研究成果を活用し、内外の専門家とコラボレーションや市中技術活用を通じて実現してきたモデル結合の取り組みをご紹介します。

循環システム構築技術

シミュレーションで未来を予測する研究は環境や経済などの分野で数多く行われています。現実の世界では環境や経済などの様々な事象が相互に影響し合っていますが、シミュレーションにおいて異分野の予測モデルを相互に接続するのは簡単ではありません。たとえば、降水量などの気候データは緯度経度のグリッド単位で予測されるのに対して、農業・工業などの経済活動は国・地域単位で予測されるといった空間解像度の違いがあります。したがって、分野によって扱い方が異なるパラメータを適切に変換して伝達する必要があります。我々はこのようなパラメータ変換を行い、気候に関する統合陸域シミュレータ(Integrated Land Simulator; ILS)と経済に関する統合評価モデル(Global Change Analysis Model; GCAM)の結合を行いました。結合されたモデルでは水資源量と水消費量の予測から未来の水ストレスを予測することができるようになりました

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