大規模計算処理技術

研究の背景

地球規模の環境と人々の経済活動は各々、長年にわたる観測により得られた過去から現在のデータに基づき、モデル化され、現在から未来を予測するためのシミュレーション技術として発達してきました。
しかし、実際の地球規模の環境と人々の経済活動の関係を予測するためには、さまざまな領域が複雑につながっているがゆえに、単領域のシミュレーションのみで精緻な予測を行うことは困難です。
同様の課題は工業生産の分野でも存在し、いくつかの単領域のシミュレーション技術を連成し、System of Systemsとして解く試みが行われています。しかし、地球規模の環境かつ、人々の経済活動も対象とすると、膨大な計算量だけでなく、シミュレータ間の結合に関する課題も多く、まだ実用化されていません。

本プロジェクトでは、異種シミュレータを結合するために欠かすことが出来ない技術開発に取り組んでいます。

連成シミュレーション技術

地球環境と経済社会をSystem of Systemsとして再現することに向け、私たちは既存のシミュレータに対する改修を最小限に留めつつも様々なユースケースに適用可能な連成技術の提供をめざしています。その要求仕様を抽出し簡易アーキテクチャ的にまとめたのが以下の図です。連成の基本機能の提供に加え、計算の正確さや速度に関する評価ツールの提供や、モデルやデータを再利用可能な形で提供することもスコープとしています。

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連成の基本機能について代表的なものを説明します。まずは各シミュレータの内部時刻を一つの時刻(論理時刻)で統一的に管理する機能および因果関係に従ってシミュレータ間でデータを交換する機能を実装しています。離散的に発生するイベントは時刻が重要な場面が多いため、タイムステップを動的に分割する仕組みも実装しています。また因果関係にループが出来ている場合には、データ交換間隔を十分短くした上で次のタイムステップの相手に渡すやり方や、同じタイムステップ内で収束するまで計算を回すやり方を具備しています。

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