人は、話しや身振りや表情によって他者に考えや感情を伝えようとします。相手は、聞く、見る、触るといった感覚を通してそれを受け取り、意図を理解しようとします。快・不快や喜怒哀楽などの感情が引き起こされることもあるでしょう。日常生活における人と人とのコミュニケーションは、このようなやりとりの繰り返しによって成立しています。ごくあたりまえのことのようですが、その背後では、感覚器の精巧なはたらき、脳における高度な情報処理や身体各部の変化など、意識にのぼらない膨大で複雑なプロセスによって支えられています。情報通信機器の問題や身心の障害によって、そのプロセスが何らかの形で妨げられたならば、コミュニケーションにたちまち影響が生じ、人と人とが共鳴しあうことはなくなるでしょう。
私たちは、このような情報処理を行う脳のメカニズムの解明を目指して、心理物理学、神経生理学、計算モデル、実体モデルなどのさまざまな角度から総合的に研究を進めています。その成果は、心と心をつなぐ情報通信技術の実現につながるものと考えています。
グループリーダ 西條 直樹