機械学習を利用した無線LANチャネル情報に基づく物体検出技術

2020年(令和二年)

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1. 無線センシング技術の特徴
電波はスマートフォンを代表とするモバイル端末などへの通信媒体として、移動通信システムや無線LAN(Local Area Network)システムで幅広く利用されております。一方で、電波は通信用途だけでなく、センシング・電子レンジ・GPS(Global Positioning System)・無線電力伝送などの非通信の用途にも活用され、生活に不可欠なものとなっております。近年、特に無線センシングに注目が集まっており、「人や動物などの検知」や「物体や行動の識別」といった適用領域が注目されています。
センシング技術として、無線を利用する方法以外に、超音波、赤外線、カメラを利用した方法がありますが、これらと比較して、検出範囲・見通し外/夜間の検知の観点で優れております(図1)。さらに、無線LAN(Wi-Fi)の電波を用いる無線センシング技術の場合、既設される無線LANのデバイスの一部を再利用することが可能となるため、導入コストの削減や秘匿性の確保につながります。

無線センシング技術の特徴

図1 無線センシング技術の特徴

2. 機械学習を利用した無線LANチャネル情報に基づく物体検出技術
アクセスサービス技術研究所では無線センシング技術として、機械学習を利用した無線LANチャネル情報(CSI: Channel State Information)に基づく物体検出技術の検討を進めてまいりました。この技術では対象エリア内にIEEE 802。11ac/axで規定される無線LANアクセスポイントと端末を配置し、その間の電波の変動を解析することで、センシングを行います(図2)。具体的には、別に設置する収集デバイスが、アクセスポイントと端末の間で定期的に交換される送信ビームフォーミングで必須となるCSIを通知する無線パケットを一括して収集し、収集した情報に機械学習を適用することでセンシングを実現します。

CSIに基づく物体検出技術の仕組み

図2 CSIに基づく物体検出技術の仕組み

本システムの実験の様子を図3に示します。図3では検知対象物として見通しのきかない段ボール箱の中にイノシシに見立てたぬいぐるみをいれ、その存在の有無の検出を行っています。また無線LANを利用することによりこれまで特殊な装置でしか取得できなかったCSIを簡易に取得することができ、さらに、既設される無線LANシステムの再利用も可能となるため、導入コストを大幅に低減することができます。

CSIを用いた機械学習に基づく物体検出技術実験の様子

図3 CSIを用いた機械学習に基づく物体検出技術実験の様子

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