「知の泉を汲んで研究し実用化により世に恵を具体的に提供しよう」
1950年に当時逓信省電気通信研究所の吉田五郎初代所長が掲げ、70年以上経った今でもNTT研究所のDNAとして生き続ける言葉です。この言葉には、今こそ研究所がもつべき三つの覚悟が込められています。
1.「知の泉を汲んで研究し」
今はインターネットやAIの活用により、さまざまな情報がすぐに手に入る時代になりました。しかし、本当の「知」というのは、たやすく得られるものではありません。いい泉が出る場所はなかなか見つかりません。見つけられても険しいところにあったりします。いい研究は、たどり着くのが難しい泉を見つけることから始まります。NTT研究所は、それを支える歴史と仲間を持っています。すなわち、数十年かけて先輩から後輩へと脈々と受け継がれてきた組織知と、組織知を継承してきた研究員たちの交流から生まれる集合知です。NTT研究所は、この二つの知を武器に泉を見つけ汲み続けてきました。
現在、世界最高峰の研究実績を有する光通信技術、ネットワーク技術、音声技術、暗号技術、量子計算機技術の分野は、最たる例です。最高の研究なくしては、今後のより高度で複雑な技術課題や社会課題に対峙することはできません。これまで以上に研究力を鍛え世界最高峰の地位を確固たるものにしていきます。
2.「実用化により」
「実用化」という言葉は、吉田初代所長が日本で初めて使ったとされています。この言葉には、学術的殿堂であった電気試験所から実用化まで責任をもつ電気通信研究所への変革に対する強い決心が込められています。NTT研究所は、光通信技術、音声・画像符号化技術、大型計算機技術など、未踏の領域ながら社会的重要性が高い情報通信インフラを支えるために、研究だけでなく実用化まで責任を持って取り組んできました。
現在、NTTが提供するサービスは、通信インフラを超え、社会インフラ、さらには地球規模のインフラへと変化しています。この変化に対応するために、NTTは、2019年にIOWN構想を発表しました。その後、研究・開発・実用化と進め、2023年には、初の商用サービスとなるIOWN 1.0を開始しました。今後は、光電融合デバイスの実用化や、通信および計算機環境への適用と、それらを最大限活用するデジタルツインコンピューティングや次世代汎用AIなどに取り組み、IOWN構想を世の中に実装していきます。
3.「世に恵を具体的に提供しよう」
通信ネットワークや計算機などの研究が途に就いた当時は、速くて安いものを作れば、必ず使ってもらえました。すなわち、研究者が考える「いいもの」を研究・開発・実用化すれば、「世に恵を提供する」ことができました。
しかし、昨今の社会は、変化が激しく、複雑で、価値観が多様化しているため、研究者が考える「いいもの」と社会が求める「いいもの」とは嚙み合わないようになってきました。特にグローバルではその傾向が顕著となります。こうした世の中において、「知の泉を汲んで研究し」「実用化により」を着実に進めるとともに、マーケット分析・展開の専門部隊と連携し、研究を企画・推進していくマーケットイン型研究と、マーケットも気づいてない未来を自らが創造するプロダクトアウト型研究をバランスよくとりながら、世の中に具体的な価値を提供していきます。
NTTグループは、2023年に新中期経営戦略「New value creation & Sustainability 2027 powered by IOWN」を発表しました。この実現に向けては、上記のNTT研究所の三つの覚悟全てが極めて重要となります。NTT研究所は、電気通信研究所設立時の初心にかえり、研究・開発・実用化・価値提供の全ての大切さを再認識しつつ、「研究者が志をもち、わくわくし続けること」、「圧倒的なテクノロジーでスケーラブルかつ持続的に社会に役立つこと」、「未来を予測するのではなく、創造すること」、「直感力を鍛え、独創的であること」を行動指針として、研究員全員で世界最高の研究開発を遂行していきます。