10.先端素材

新たな“ 感覚” をも実現しうる新奇素材創生

現在先端素材の開発は世界中で各社がしのぎを削る状況にあり、環境に合わせて変化する多機能素材やナノマテリアルのような極小素材へのアプローチ、あるいはバイオテクノロジーや次世代メモリへの注力が進んでいます。材料開発にかかる時間の短縮など従来の課題を解決する取り組みは増えていますが、一方ではバイオマテリアルのような領域ではまだまだ多くの課題が残されています。

わたしたちも先端素材の研究・開発に取り組んでいますが、単に新しい素材や高機能な素材を開発するのではなく、わたしたちの描くスマートな世界の世界観に合わせ、「光通信の低消費電力化・低遅延化に資するデバイス」「ナチュラルな感覚や気づきを提供する素材」「新奇機能の発現」という3 つの方向性を定めています。

光通信デバイスの確立においては、たとえば大容量化のためにマルチコアファイバや小型コヒーレント送受信機の開発、長延化のために高出力光源や高感度受光素子の開発が進んでいるなど、その目的に応じて新たな素材も求められています。同時にポスト5G を見据えたテラヘルツ領域の超高周波電子デバイスやメタマテリアルの研究も進んでおり、高速なネットワークを人々が自然に利用するために新たな素材は必要不可欠だといえるでしょう。

ナチュラルな感覚や気づきの創出においては、デバイスの存在を感じさせないために超小型化・透明化を実現する素材の開発を行なっています。ナチュラルエレクトロニクスと呼ばれる電池の透明化や回収不要化は進んでおり、こうした素材はこれから身近な場所に続々と導入されていくかもしれません。

わたしたちがめざすスマートな世界の可能性をさらに広げうるのが、新奇機能をもつ素材の研究でしょう。究極の薄さと機能をもつ原子・分子層材料や高効率エネルギー変換材料や、生体機能を補完するインプラント素材が実現すれば、さまざまなテクノロジーはよりナチュラルな存在となってわたしたちの生活に溶けこんでいくでしょう。先端素材とその他テクノロジーの開発は、両輪となってこれからも進んでいくのです。

注目のトピック
新物質Sr3OsO6
新物質Sr3OsO6

約780℃という高温まで磁石としての性質をもつ新物質Sr3OsO6 を世界で初めて合成・発見しました。これは電気を通さない物質(絶縁体)の強磁性転移温度を88 年ぶりに更新するものです。また、理論計算の併用により、高い温度で強磁性が発現するメカニズムに関する基礎科学的な知見も得られました。この物質の発見は、室温~ 250℃程度の実用的な温度で安定に動作する磁気ランダムアクセスメモリなど高機能磁気素子の開発につながると考えられます。

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  • 機能性原子層材料
  • 光電融合向け先端素材
  • 新奇機能を備えた先端素材
  • 窒化物半導体