1.人工知能

人間を深く理解し、共生する存在へ

これまで多くの研究機関が大量の学習データを投入し人工知能(AI)の性能向上に注力してきた結果、さまざまな領域で実用化が進んできており、AI を使ったサービスは日常的な存在になりつつあります。今後、現実空間とサイバー空間がこれまで以上に密接にからみあうようになれば、より一層人間の生活に AI は溶けこんでくるでしょう。

しかし、AI と人間がより密接に関わっていくならば、それは道具のような存在ではなく一人ひとりの人間を深く理解し自然に寄り添ってくれる、共生できる存在へ変わらねばなりません。そのためにはただ人の振る舞いを分析し実現するだけではなく、その背景にある文脈や社会規範、価値観を理解できなければいけないでしょう。

こうした変化に対応すべく、わたしたちもさまざまなアプローチで人の心理や価値観、能力を深く理解する AI の研究に取り組んでいます。人と人とのコミュニケーションを深く分析することによる思考や心理のモデル化はもちろん必要ですが、常識や良識として人や社会に潜在する暗黙知を“ 集合知 ” として抽出しなければ人の意思決定を正しく理解することはできないでしょう。あるいは、いずれ人のデジタルツインを生成し現実空間でもサイバー空間でも仕事や運動などさまざまな活動を行う環境が実現されるとすれば、人の行動や能力をモデル化して単に人を再現するだけでなく、さらに能力を拡張しうる技術も求められてくるはずです。

こうした領域の研究を進めるうえで、データの構造化技術や機械学習モデル生成技術の改良が重要なことは言うまでもありませんが、同時により深く「人間」という存在を考えなおしていくアプローチが重要となります。脳科学などを通じて身体や思考のメカニズムを解き明かすことや、人文学的・哲学的アプローチによってそもそも「人間」とはいかなる存在なのか、何が人間を人間たらしめるのか再考しなければ人の可能性を拡張することは難しいでしょう。その先にこそ、人と信頼関係を築ける未来の AI がありうるのだとわたしたちは考えています。

注目のトピック
京都大学との共創プロジェクト
京都大学との共創プロジェクト

IOWN 構想の実現に向け、人の生きがいや倫理、社会制度などを検討する取り組みを推進していくために、わたしたちは 2019 年 11 月から京都大学の出口康夫文学研究科教授を中心としたグループとの共創プロジェクトを実施しています。本プロジェクトは領域横断的な知としての哲学を新たに導入し出口教授が提唱する東洋的自己観にもとづいて、現実世界と仮想世界の分断、また人や社会のさまざまな分断を乗り越えるための新たな価値観の構築をめざしています。

  • キーワード
  • 思考・心理モデル化技術
  • 価値観処理技術
  • 個性情報処理技術
  • 人の行動・能力モデル化技術