更新日:2019/06/28
近年、通信機器の高機能・高性能化に伴い半導体デバイスの高集積化が進み、宇宙線起因の中性子線によるソフトエラー(一時的なメモリエラー)が増加するリスクが高まっています。そこで、NTTではソフトエラーの発生を想定し、ソフトエラーが発生しても通信サービス・保守に影響を及ぼさない通信機器の対策設計手法、及びソフトエラー発生時の動作や対策効果を確認可能な再現試験技術を確立しました。
近年、宇宙線によって生じる中性子線に因る通信機器のソフトエラーが増加しつつあります。ソフトエラーというのは、永久的にデバイスが故障してしまうハードエラーとは異なり、一時的な故障でデバイスの再起動やデータの上書きによって回復する故障のことです。ソフトエラーが通信機器に発生すると、様々な故障モードを誘発し、通信サービスに影響を及ぼす可能性があります。通信機器では、このような故障も想定し通信サービスに影響を及ぼさないように設計をしますが、ソフトエラーを再現させることが困難であるため、検証ができませんでした。そのため、想定外の動作が起きることがありました。
近年、半導体デバイスの高集積化・微細化に伴いソフトエラーが発生する可能性が急激に高くなっております。そのため、ソフトエラーの発生を想定した通信機器の設計が重要となっております。このようなソフトエラーに対してはECC(Error Check and Correct Memory)と呼ばれるビットエラー訂正機能や、ソフトエラーを検出した際に装置が自律的にデバイスのリセットを行うなどの対策が有効ですが、ソフトエラー発生率の低い部位に過度に対策を実装すると通信機器のコストが高くなる可能性があります。そこで、提供する通信サービスの品質レベルや導入する装置台数を把握し、ソフトエラーに対する品質レベルの目標を定め、適切にソフトエラー対策を設計する必要があります。さらに、加速器中性子源を用いることにより低コストにソフトエラーを再現させ、対策の確認を行うことにより、ソフトエラー対策の評価を確実に行うことができます。このように、NTTではソフトエラーを想定した通信機器の設計を行い通信サービス品質の向上に取り組んでおります。
NTT宇宙環境エネルギー研究所 レジリエント環境適応研究プロジェクト