更新日:2025/08/08
NTTコミュニケーション科学基礎研究所(CS研)では、人と人、人とコンピュータとの間の「こころまで伝わるコミュニケーション」の実現をめざし、「人を深く理解し極める」人間科学の研究および、「人の能力に迫り凌駕する」情報科学の研究に取り組んでいる。本特集では、CS研の最近の基礎研究成果について紹介する。

人と情報の本質を究め、人と情報をつなぐ ――未知なる真理の探究と学際的研究により持続可能な未来を切り拓くコミュニケーション科学
NTTコミュニケーション科学基礎研究所(CS研)では、情報と人間を深く理解し究める基礎研究と、その理解から得られた知見に基づき、情報と人間をつなぐ基盤技術を創出することにより、人と人、人とAI(人工知能)、さらには人と社会との「こころまで伝わるコミュニケーション」の実現に向けた研究開発を行っています。本稿では、CS研における最新の研究の取り組みについてその一部を紹介します。

身体に根ざした共感の科学から、つながる家族のウェルビーイングへ――身体を介した共感メカニズムの解明および身体性情報伝送技術を活用した離れた家族のつながり支援
人と人との共感や絆は、私たちがいきいきとした良好な状態、つまりウェルビーイングを維持するうえでとても大切です。では、共感や絆はどのようにして生まれるのでしょうか。また、共感を抱き、絆を深めることを支援するためには、どのような情報を伝え合うことが大切なのでしょうか。本稿では、共感や絆の形成における身体の役割に注目し、共感が生じるメカニズムを調べた研究を紹介します。加えて、離れて過ごす家族の絆を促進するために、遠隔コミュニケーションにおいて、身体を介した相互作用を応用する試みについても紹介します。

気の利く対話AIのための「空気を読む」技術――マルチモーダル情報を用いた対話の場・関係の理解とインクリメンタル応答生成
対話システムが人間の日常生活に溶け込み、「気の利いた」会話ができるようになるには、会話の場面や対話者どうしの関係を認識し、適切な間合いで応答を行うといった「空気を読む」能力が求められます。私たちはこれまで、「空気を読む」対話システムの実現をめざし、さまざまな対話処理技術の研究に取り組んできました。本稿ではそのうち、日常会話のシーンを理解する対話状況認識、対話者間の心理的距離感を理解する親しみ認識、人間の対話のテンポに追随するためのインクリメンタル応答生成の3つの研究をピックアップして紹介します。

音の聴き方を自ら学ぶAI――自己教師あり学習によるさまざまな音の汎用表現学習技術から、大規模言語モデルを活用した音の理解の最前線へ
音や画像などメディア情報から意味の抽出に有用な特徴量を学習する表現学習は、AI(人工知能)による優れたデータの理解を可能にしました。本稿では、私たちの身の周りのさまざまな音をAIに理解させるための音の表現学習技術を紹介します。学習した表現は、動物の鳴き声の分類や音楽ジャンルの識別など、音の理解にかかわる幅広い問題に応用できます。私たちは、表現学習の中でも、音データだけを用いて学習を行う「自己教師あり学習」を活用して技術を深化させており、さらに大規模言語モデルを活用した文章の意味と対応付ける音の理解へと発展させています。

データの交わりに隠れた未知の知識を発見する――無限の仮説を考慮して生体現象を解釈するAIモデルと高信頼メディカルヘルスケアへの展望
近年さまざまな生体情報のデータ解析によってメディカルヘルスケアの推進につながる数多くの知見が得られるようになってきました。一方で、人々の生命や健康と密接にかかわる分野でのAI(人工知能)の利用においては、特にその解析・予測・判断におけるリスク・不確かさの評価が重要な課題として注目されるようになってきています。本稿では、モデルが生体現象を説明する際に無限に存在し得る仮説を考慮することで、データ解析のリスク・不確かさを明示的にとらえさせようとする機械学習手法について解説します。

ロボットに心を感じる子どもたち――未来の幼児教育を支える学習コンパニオンロボット
技術の進展により、ロボットが子どもの生活にかかわる機会が増えています。近い将来、ロボットは幼児教育を支える学習コンパニオンとして、私たちの生活に浸透していくと考えられます。しかし、子どもがロボットをどのように認識し、受け入れているのかについては十分に解明されていません。本稿では、子どもがロボットから知識を学べるのか、ロボットとの社会的インタラクションが子どもの行動や心の感じ方にどのような影響を与えるのかを探る実験心理学的研究を紹介します。

「NTT コミュニケーション科学基礎研究所 オープンハウス2025」開催報告
NTTコミュニケーション科学基礎研究所では、最新の研究成果を多くの方々に知っていただくイベントとして、2025年5月20〜22日の3日間、大阪・京橋にあるNTT西日本i-CAMPUS内のQUINTBRIDGEとPRISMを会場に「オープンハウス2025」を開催しました。来場者は完全現地参加型の事前予約制とし、1078名(昨年比2割増)の方々にご来場いただきました。本稿ではその開催模様を報告します。