更新日:2018/06/01

    群集誘導のための人流予測技術 NTTサービスエボリューション研究所
    NTTコミュニケーション科学基礎研究所

    佐藤 大祐(さとう だいすけ)†1/ 塩原 寿子(しおはら ひさこ)†1/ 宮本勝(みやもと まさる)†1/ 上田修功(うえだ なおのり)†2

    NTTサービスエボリューション研究所†1/ NTTコミュニケーション科学基礎研究所†2

    背 景

    人が多く集まるような観光 ・ 商業エリアや大規模なイベント会場では、大きな事故につながるほどの混雑が発生してしまう可能性があります。そのような場において、人々が安全かつ快適に移動できるように誘導することはとても重要です。これは、エリア全体の現在の人の流れを把握し、複雑な要因で発生する混雑を事前に予測し、適切な対策を打って誘導することで実現することができます。また、誘導を実施することで人々の挙動が変化するため、変化した人流を再度センサなどにより計測して把握し、次に起こる混雑を予測するサイクルを繰り返すことにより、絶え間なく変化する人流を適切に誘導することが可能になります。

    本稿ではこの一連のサイクルのうち、人流の予測を実現するための技術である「時空間変数オンライン予測技術」と、技術の活用に向けた研究開発の取り組みについて紹介します。

    時空間変数オンライン予測技術

    大規模イベントなどの混雑する場において、混雑リスクを事前に予測しておくことは大切です。混雑リスクの予測といった場合、例えば入場ゲートのように、あらかじめ混雑しそうな場所が分かっていて、その時間や混雑の度合を予測したい場合と、いつ ・ どこで発生するか分からない、想定外の混雑の発生を予測したい場合があります。このうち、後者の解題を解決するための技術が時空間変数オンライン予測技術です。(1)

    時空間変数オンライン予測技術の処理概要を図 1 に示します。混雑状況の観測を行うエリア内の、時間、空間座標に紐付いた値を持つ時空間データが入力となります(図 2(a))。例えば、GPSを利用した位置情報データや、イベント会場内に設置された位置センサによる人数カウントデータなどがこれにあたります。次に、入力されたデータから、観測されていない場所の未知の値を推定し、滑らかな空間データを観測時刻ごとに作成します(図 2(b))。このようにしてつくられた時系列の空間データを基に、各時間に共通する場の特徴をとらえた、潜在的な構造のモデルを構築します(図 2(c))。このモデルを蓄積されたデータや新しく入力されてくる直近のデータに対して当てはめることで、観測対象領域内での統計的な人の動きの変動を、潜在的な構造における時系列パターンとして得ることができ、このパターンを学習することで近未来の変動の予測を行います(図 2(d))。

    空間的 ・ 時間的に近いデータは類似するという仮定のもと予測を行う従来法では、急激な変動を予測することが難しいという問題点がありました。時空間変数オンライン予測技術は、潜在的な構造モデルにおける時系列の変動パターンを学習するため、大きなトレンドの変動にも追随しながら予測することが可能です。

    図1 安全で快適な移動・回遊を実現するためのサイクル
    図1 安全で快適な移動・回遊を実現するためのサイクル
    図2 時空間変数オンライン予測技術の処理
    図2 時空間変数オンライン予測技術の処理

    人流データ時空間予測ソフトウェア

    リアルタイムに収集したセンサデータから現在の混雑状況を可視化し、蓄積された時空間データを基に時空間変数オンライン予測技術によって将来の混雑状況の予測を実現したのが「人流データ時空間予測ソフトウェア」です。…

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