技術入門

高頻度パフォーマンスモニタリング技術 第1回

NIC 光トランスポートシステムプロジェクト

高速リンクシステムグループ 村上 正樹(むらかみ まさき)

#APN#信頼性#監視制御

2026/2/26

はじめに

NTTのIOWN(Innovative Optical and Wireless Network)構想を支える主要な技術の1つとして、電気中心だったネットワークを全て光に置き換えるAPN(All-Photonics Network)が存在します。APNは今までにない大容量性、低遅延性、省電力性を実現し、持続可能な社会を支えるインフラとして期待されています。現在APNは一部で導入が進んでいますが、今後のさらなる拡大に向けて信頼性は重要な要素となっています。しかし、既存の伝送装置のモニタリング機能は伝送網の急激な状態変化を捉えることができないため、信頼性に関して課題を残しています。本記事では、高信頼なAPNを実現するために、急激な状態変化を監視可能な「高頻度パフォーマンスモニタリング技術」 を紹介します。

パフォーマンスモニタリング

ネットワークの運用では、回線は正常か、品質は劣化していないか、異常なら原因が何かを分析する必要があります。原因分析を行うために必要な伝送装置の性能情報を監視する技術がパフォーマンスモニタリング(PM:Performance Monitoring) です。トランスポンダなどの伝送装置は動作中にさまざまな性能情報を計測し、装置内で記録を保存したり、運用システムがリアルタイムにそれらの情報を収集(テレメトリ)したりします。光伝送の世界では性能情報として例えば以下のような指標がよく扱われます。

  • Input Power:受信した光のパワー
  • OSNR (Optical Signal to Noise Ratio):受信した光信号と雑音の割合
  • BER (Bit Error Rate):ビットエラー率
  • SOP(State of Polarization):受信光の偏波状態
  • DGD(Differential Group Delay):受信した偏波モード間の遅延差
  • ネットワークの監視制御装置はPMにより上記のような情報を収集し、伝送網の分析に利用します。

    従来のパフォーマンスモニタリングの課題

    APNが拡大するにつれ、多数のベンダの装置が混在してAPNを構成するようになります。単一ベンダで構成されたネットワークであれば、想定される故障パターンを事前に把握しやすく、原因特定も比較的容易です。そのため、従来のパフォーマンスモニタリングは15分間隔で性能情報を取得しておりましたが、十分な原因特定を行うことが出来ていました。しかし、図1のようにAPNがマルチベンダで構成され、異ベンダ装置間での接続が存在すると、予期せぬ故障が起こりやすく、その原因分析も格段に難しくなります。高度な分析を行うためには詳細な性能情報のログが必要となりますが、従来の取得間隔では不十分でした。

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    図1. APNのマルチベンダ化

    取得間隔を短くすることで、この課題は解決するように思われますが、ログファイルの容量は取得間隔に反比例して増大するため、伝送装置のストレージ容量では不足してしまいます。大容量のストレージに置き換えるアプローチもありますが、装置の高価格化を招く欠点が存在します。更に、近年では伝送装置でもソフトとハードを分離するホワイトボックス化が進められているため、ソフトとして実装されるパフォーマンスモニタリング機能が大容量のストレージを要求すると、ハード選択の自由度が下がるといった課題も存在します。

    高頻度パフォーマンスモニタリング技術

    先述の課題を解決するために確立された技術が高頻度パフォーマンスモニタリング技術(HF-PM: High Frequency Performance Monitoring)です。高頻度パフォーマンスモニタリング技術はビットエラー率の増加を検知すると、その時点から過去15分にわたり約10秒間隔の性能情報を保存します。更に、検知後15分間、約10秒間隔の性能情報をロギングします。このような動作によって、図2のように従来のPMでは捉えられないような変動でも、HF-PMでは捉えられるようになり、伝送装置の多数のパラメータから、エラー率増加の要因となったパラメータ群を特定して原因分析を出来るようになります。

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    図2. 高頻度パフォーマンスモニタリング技術

    この技術のポイントはストレージを図3のように1次保存領域と2次保存領域に分割することです。1次保存領域は常に15分間だけ性能情報の高頻度なログ情報を保存します。そして故障検知時にログ情報を2次保存領域に転送し、以降15分間、高頻度なログ情報を2次保存領域に保存します。本ストレージ分割により、大容量ストレージを必要としない高頻度パフォーマンスモニタリングを実現しています。

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    図3. HF-PMの動作

    おわりに

    本記事では高信頼なAPNを実現する高頻度パフォーマンスモニタリング技術を紹介しました。高頻度パフォーマンスモニタリング技術の詳細な仕組みはNTTが出版する技術ジャーナルでも説明していますので、是非ご覧ください。(Webから読めます:https://journal.ntt.co.jp/wp-content/uploads/2026/01/JN202602.pdf#page=22
    次回は高頻度パフォーマンスモニタリング技術がトランスポンダの機能として動作している様子をお見せします。

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