映像品質評価法

2.映像品質の客観評価法

2.3.客観評価法の分類

ユーザが体感する映像メディア品質の客観評価法は、評価に利用する情報に応じて3種類に分類されます。ITU-T勧告J.143にこの分類が規定されています。本節では各評価法の概念を示し、その用途や使用上のメリット・デメリットについて解説します(図2.3.1)。

図2.3.1 客観評価法の分類

図2.3.1 客観評価法の分類

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1)Full Reference (FR) モデル
FRモデルは、符号化や伝送損失により歪みが生じた劣化映像の情報と、それらの歪みが存在しない原映像の情報を比較し、劣化映像の品質を客観評価する方法です。FRモデルでは原映像と劣化映像の比較が可能であるため、高い精度の客観評価が可能となります。ただし情報量が非常に大きい原映像が客観評価に必要となるため、原映像の取得に多大なコストを必要とする環境(例えば映像の視聴者宅など)には適用が難しくなります。このようなFRモデルの特徴を反映して、映像をネットワークに送り出すヘッドエンドにおける品質管理への適用などが期待されています。
2)Reduced Reference (RR) モデル
RRモデルは、符号化や伝送損失により歪みが生じた劣化映像の情報と、それらの歪みが存在しない原映像から抽出した特徴量情報を利用し、劣化映像の品質を客観評価する方法です。RRモデルでは原映像の特徴量と劣化映像信号が利用であるため、FRモデルには及ばないものの、比較的高い精度の客観評価が可能となります。ただし、客観評価に原映像の特徴量とは言え、原画像情報が必要となるため、特徴量情報を伝送する手段が別途必要となります。このようなRRモデルの特徴を反映して、ネットワーク拠点間の品質比較などへの適用が期待されています。
3)No Reference (NR) モデル
NRモデルは、符号化や伝送損失により歪みが生じた劣化映像の情報のみから、劣化映像の品質を客観評価する方法です。NRモデルでは客観評価に原映像情報が必要無いため、非常に多くの環境で適用が可能です。しかし、原映像情報を利用できないため、FRモデルやRRモデルに比べると客観評価の精度は低下します。このようなNRモデルの特徴を反映して、視聴者宅内における映像再生端末の常時品質監視などへの適用が期待されています。