Web会議サービスはお客様の利用するネットワーク環境に合わせた制御を実現するため,ネットワークのスループットやパケット損失、遅延の変動に応じて映像の符号化レートを制御しています。しかし、これらの技術では、ネットワーク品質のみに基づいて符号化レートを制御するため、良好なネットワーク環境においては過剰な品質を提供してしまう可能性があります。過剰な品質の提供はデータ通信量の増加につながり、サービスの運用コスト増加につながります。そのため、サービス提供者は一定以上の適正品質を維持しつつも、過剰な品質を抑制したいというIntentがあります。
そこで、 NTT研究所ではアプリケーションから取得される情報をもとに推定されたユーザ体感品質が適正品質を満たすように映像品質を制御するWeb会議品質制御技術を提案しています。
提案制御の概要を図3-1に示します。Web会議品質制御技術はアプリケーションから、品質を推定するための情報(ビットレート、フレームレート、解像度、端末種別)を収集します。収集した情報から利用者の過去の体感品質を推定します。推定された体感品質を基に将来どのような品質の映像を配信することでサービス事業者が決定した適正品質を維持できるかを推定し、アプリケーションに送信すべき映像の品質を指示します。アプリケーションは指示された品質の映像をWeb会議サーバに送信します。
このような制御により、利用者の品質を適正品質に維持しつつ、過剰な品質を抑制します。
(図3-1)Web会議品質制御技術の概要
図をクリックすると、拡大図が別ウィンドウで開きます。
提案技術を実装したWeb会議環境を用意し、3台のクライアント端末を接続し5分間Web会議を行った際の各端末の品質値、及び、アップロードデータ量について適正品質(R)を変更した結果を図3-2に示します。図の青棒グラフは各端末の品質(左軸)を示し,オレンジ棒グラフはアップロードデータ量(右軸)を示します。適正品質(R)が5.0の結果は適正品質による制御が働いていない結果を示します。その結果と比較し、適正品質(R)を3.5に設定して本手法を適用することで、適切に品質を維持しつつ、アップロードデータ量を約57%削減できることを確認しました。
(図3-2)Web会議品質制御技術の適用効果
図をクリックすると、拡大図が別ウィンドウで開きます。
参考文献
M. Yokota and K. Yamagishi, “Quality and Transferred Data based Video Bitrate Control Method for Web-Conferencing,” IEICE Transactions on Communications, vol.E107-B, No.1, pp.272-285, Jan. 2024.