コグニティブ・ファウンデーションとはなにか

IOWN構想とコグニティブ・ファウンデーションの概要

近未来のスマートな世界を支えるコミュニケーション基盤「IOWN(アイオン:Innovative Optical and Wireless Network)。現在2024年の仕様確定、2030年の実現を目指して、研究開発が進められています。当特集の第1回連載「IOWN構想とは? その社会的背景と目的」でご紹介した通り、IOWNは次の3つの主要技術分野から構成されています。

図1 IOWN構想の機能構成イメージ
図1 IOWN構想の機能構成イメージ
図1 IOWN構想の機能構成イメージ

今回は上記のなかのコグニティブ・ファウンデーションについて解説していきます。IOWN構想のなかで、コグニティブ・ファウンデーションは、あらゆるICTリソースを全体最適に調和させて、必要な情報をネットワーク内に流通させる機能を担っています。

具体的にはマルチオーケストレータが、クラウドやエッジをはじめ、ネットワーク、端末まで含めて様々なICTリソースを最適に制御することで、ニーズにこたえるオーバレイソリューションの迅速な提供を目指すものです。以下でコグニティブ・ファウンデーションに関わる代表的な研究開発の取り組みについて紹介します。

自己進化型サービスライフサイクルマネジメント

図2 自己進化型サービスライフサイクルマネジメント
図2 自己進化型サービスライフサイクルマネジメント

ICTリソースすべてを柔軟に制御し、調和させるためのポイントは「自己進化」と「最適化」にあります。この2つの要素をあわせ持つのが自己進化型サービスライフサイクルマネジメントです。

具体例をもとに説明すると、2019年の台風15号や19号は大きな災害となり、通信サービスにも大きな影響がありました。NTTが通信基盤を提供していくなかで、これまでも機器が発するログから障害をAI(人工知能)が予測して自律的に対処する技術の研究開発に取り組んできましたが、これを今後もう一歩進めます。

例えば、台風の勢力や進路といった気象情報、イベント開催情報など、ネットワーク機器を監視するだけでは分からない情報など、多様な情報もIOWNのコグニティブ・ファウンデーションに取り入れていきます。

新たに収集した多様な情報を基に、システムが自ら考え最適化していくことで、災害発生前に対策立案し実行します。未来予測を用い、システム自体が進化していく、これが自己進化型のサービスライフサイクルマネジメントです。

図2 自己進化型サービスライフサイクルマネジメント

無線アクセスを最適化するCradio(クレイディオ)

図3 複数無線アクセス最適利用のための品質予測技術
図3 複数無線アクセス最適利用のための品質予測技術

無線リソースに関する最適化技術も新たな研究開発を進めていきます。今、世の中にはさまざまな無線の方式があります。従来の4G/LTEはもちろん、衛星通信、Wi-Fi、WiMAX、IoT向けのLPWA (Low Power, Wide Area)、そして5G、Local 5Gなど、非常に複雑になってきました。

ユーザーの様々な利用シーンにおいて、その種類や使い方、ネットワークサービスを意識させない無線アクセスを最適化する技術。このような無線制御技術の総称を「Cradio(クレイディオ)」と名付けて研究開発を推進しています。Cradioでは、場所だけでなく混雑や品質の予測に基づいて、プロアクティブに無線接続を最適化します。

例えば、Wi-Fiのスループットが低い東京駅にいる人に、急いで情報を送りたい、といった場合にネットワークの側から最適な無線アクセスを選択し、接続を制御することもできるようになるでしょう。場所、アプリケーション、環境などに応じて、方式や事業者を意識せず、無線アクセスを利用できるような無線制御技術をコグニティブ・ファウンデーションに取り入れていきます。

Cradioはドローンや自動運転車両、スマートフォン端末の移動などに伴う無線通信品質の動的な変化をAI(人工知能)で事前予測し、アプリケーションの要件に応じて最適な無線環境を自動選択・設定することで、多種・多様なサービスの提供をめざしています。

図3 複数無線アクセス最適利用のための品質予測技術

異なるレイヤのリソースを最適統合するマルチオーケストレータ

コグニティブ・ファウンデーションは、クラウドからエッジコンピュータ、ネットワークサービス、ユーザー設備などレイヤの異なるICTリソースの配備・設定・連携、そして管理・運用を一元的に実施する仕組みです。

コグニティブ・ファウンデーションはこれらの多様なターゲットを、仮想化されたICTリソース群として扱い、マルチオーケストレーション機能をハブとしてレイヤの異なる複数のリソースを最適統合していきます。

マルチオーケストレータを構成する3つの機能群

コグニティブ・ファウンデーションを支えるキー・テクノロジーであるマルチオーケストレータは、以下の3つの機能群で構成されています。それぞれの機能群はAPI(Application Programming Interface)を通じて疎結合可能なかたちになっています。

図4 コグニティブ・ファウンデーションとネットワーク3 層モデル
図4 コグニティブ・ファウンデーションとネットワーク3 層モデル
  • 「オーケストレーション機能群」
    ワークフローエンジンとICTリソースごとに適したコマンドに変換するアダプタ群
  • 「マネジメント機能群」
    標準データモデルに基づく構成情報、設計情報などの管理機能群
  • 「インテリジェント機能群」
    設計・構築・試験から運用などのICTリソースを常に最適に保ち自律運用を可能とするAI機能群
図4 コグニティブ・ファウンデーションとネットワーク3 層モデル

未来にむけてICTリソースは飛躍的に増大し続けていきます。また近年よく使われる「エコシステム」という言葉に代表されるように、たとえばひとつの企業というような従来の枠組みを超え、より広範な世界でICTリソースを連携させ、活用することが求められています。IOWN構想のなかで、コグニティブ・ファウンデーションはICTリソースを全体最適に調和させる重要な役割を果たしていきます。

※当稿は「NTT R&Dフォーラム2019 特別セッション」他の内容をもとに再構成したものです。

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