IOWN構想とは? その社会的背景と目的

IOWN構想とは?

IOWN (Innovative Optical and Wireless Network)構想とは、革新的な技術によりこれまでのインフラの限界を超え、あらゆる情報を基に個と全体との最適化を図り、多様性を受容できる豊かな社会を創るため、光を中心とした革新的技術を活用した高速大容量通信、膨大な計算リソース等を提供可能な、端末を含むネットワーク・情報処理基盤の構想です。2024年の仕様確定、2030年の実現をめざして、研究開発を始めています。

図1:IOWN構想の機能構成イメージ
図1:IOWN構想の機能構成イメージ

IOWN構想では、これまでの情報通信システムを変革し、現状のICT技術の限界を超えた新たな情報通信基盤の実現をめざしています。ネットワークから端末まで、すべてにフォトニクス(光)ベースの技術を導入した「オールフォトニクス・ネットワーク」、実世界とデジタル世界の掛け合わせによる未来予測等を実現する「デジタルツインコンピューティング」、あらゆるものをつなぎ、その制御を実現する「コグニティブ・ファウンデーション」からなりたちます。
 

図1:IOWN構想の機能構成イメージ

IOWN構想が求められる社会的背景と目的

インターネットやスマートフォンといった近年の重要なイノベーションにより社会のあり方は大きく変わってきました。さらに今後は社会の情報化がますます加速し、AIやIoT(Internet of Things)技術が生活シーンに取り入れられていくことで、私たちの暮らしは大きく変わり、多種多様な価値観が出てくると考えられます。

多様性への対応

自分とは違う他者の立場に立った情報や感覚、他者の目線を通した情報を得ることが、他者への理解を深めるためには、大きな助けになります。これを実現するためには、より高精細で高感度なセンサを開発してより多くの情報を得ることはもちろん、他者の感覚、さらには主観にまでも踏み込んだ情報処理が要求されます。科学技術だけではなく、人文科学、社会科学の知見をも取り入れる必要があります。

このような技術で実現した結果を人間がストレスを感じることなく自然に享受できる心地良い状態を「ナチュラル」と名づけ、これを追求していきます。

インターネットの限界の超越

図2: データ量の増加の推計
図2: データ量の増加の推計

このような世界では、膨大な情報処理が必要となり、既存の情報通信システムでは、伝送能力と処理能力の双方に限界が訪れます。日本のインターネット内の1秒当りの通信量が2006年から約20年間で190倍(637 Gbit/sから121 Tbit/sへ)になるという推計や、世界全体のデータ量が2010年から15年間で90倍(2ZBから175 ZBへ)に増加するという推計があります。(図2)

このように、今後通信量のさらなる増加、ネットワークのさらなる複雑化、輻輳などによる遅延の増加などの重大な課題に直面するため、情報通信システムのブレイクスルーが求められています。

図2: データ量の増加の推計

消費電力の増加の克服

図3: IT機器の消費電力量の推計
図3: IT機器の消費電力量の推計

IoTの進展によるネットワーク接続デバイスの爆発的増加は、ネットワークの負荷を高めるだけでなく、エネルギー消費の面でも大きな懸念になっています(図3)。また、データセンタの電力消費量の増加も世界的な問題となっています。

これらのような社会的課題を、IOWN構想では以下のように解決していく見込みです。

  • エレクトロニクスとフォトニクスの融合による電力効率の大幅な向上によって、爆発的に増大する情報量にも対応できる処理能力を提供する
  • 通信の大容量化・低遅延化によって、さまざまなセンサが収集した五感を超える膨大な情報をリアルタイムに伝送する
  • 機密性や安定性を高度なレベルで提供可能になり、ミッションクリティカルサービスでも利用できるようにする
  • さまざまなリソースを一元管理するマルチオーケストレータによって、業界や地域ドメインを超えたリソース活用を可能にする
  • モノだけでなく人も含めたさまざまなデジタルツインを組み合わせて実世界の「再現」を超えたインタラクションをサイバー空間上で自由自在に行い未来予測等に活用する
図3: IT機器の消費電力量の推計

IOWN構想がめざす未来

IOWN構想によって、さまざまな価値観を包含した多くの情報をリアルタイムに、かつ公平に分け隔てなく流通・処理させると、他者の視点や体験の共有が容易となります。それにより、他者の理解と共感にもとづく社会行動を促すことができれば、人と人、人と社会の「つながり」の質を高め、その結果、個々人の価値観をアップデートできるのではないかと考えています。

IOWN構想がめざす社会で、鍵となるのは「未来予測」です。これまで築いてきたコミュニケーション主体のネットワークを基盤に、未来予測という新たな価値を創出します。正確な予測ができれば、それに応じた対応を取ることができます。これはつまり、「未来を変えること」です。 比較的単純な未来予測ならば、現在のシステムでも実現していますが、IOWN構想がめざす未来予測は、桁違いの正確さと迅速さが特徴です。

たとえば医療やヘルスケアの分野では、バイオデータを活用した高度な未来予測も考えられます。体温や血圧、心拍数などの日々のバイオデータに、これまでかかった病気の履歴、ゲノム情報などを合わせて演算処理することにより、いつ頃、何の病気にかかりやすいかを正確に予測できます。これにより、各個人ごとの予防や、病気にかかった時の迅速な対応ができます。

IOWN構想の実現・普及を促進するIOWN Global Forum

IOWN構想の実現には、広範にわたる知識・見識が必要となり、NTTグループのみで実現できることではありません。

NTT、インテル、ソニーの3社は、さまざまな業界から参加パートナーを募り、協力してIOWN構想の実現・普及をめざすIOWN Global Forumを立ち上げました。本フォーラムは以下に示すような分野等において、新しい技術の仕様やフレームワーク、リファレンスデザインなどの検討を通じて、IOWN構想の実現・普及を促進していきます。

  • 先進的な光電融合技術を活用したフォトニクス関連研究開発
  • 分散コンピューティング関連研究開発
  • スマートな世界をつくるユースケース・ベストプラクティスとそれを実現する研究開発

また、技術分野だけではなく、人文・社会科学的な知見のある方にも入っていただき、新しい世界を一緒に検討していきたいと考えています。

関心のある企業、団体の皆様には是非加入して頂きたいと考えています。IOWN Global Forumおよび加入に関する詳細はhttp://www.iowngf.org(英語)に公開していますのでご覧ください。

参照