私たちの研究グループは、将来のネットワークおよび次世代コンピューティングの実現に向けた革新的なデバイス基盤技術の確立を目指しています。また、計測・計算・通信といった産業分野における新たなビジネス創出に貢献する先端的応用技術の展開と社会実装にも取り組んでいます。特に、石英系平面光波回路(PLC)や周期分極反転ニオブ酸リチウム(PPLN)導波路などの光導波路デバイス技術を中核に据え、従来の性能限界を打破する革新的な光デバイスの研究開発を推進しています。これにより、ICT社会に新たな価値をもたらす技術革新を実現することを目指しています。 ・光量子コンピュータ向け光デバイス

【 ニュースリリース 】 ・2015年10月 1日 「時間反転波を用いて、波長多重信号の劣化を高密度で一括補償する 原理実証に世界で初めて成功 ~位相共役変換の新技術により、1/10以下のデジタル信号処理で 長距離伝送が可能に~」 ・2019年11月 5日 「NTTとJAXA、地上と宇宙をシームレスにつなぐ超高速大容量でセキュアな光・無線通信インフラの実現に向けた共同研究を開始」 ・2021年12月22日 「世界初、ラックサイズで大規模光量子コンピュータを実現する基幹技術開発に成功 ~光ファイバ結合型量子光源を開発~」 ・2023年3月6日 「超高速量子計算のための世界最速43GHzリアルタイム量子信号測定に成功 ~5G時代の超高速光通信テクノロジと光量子テクノロジの融合によるスーパー量子コンピュータ実現へ~」 ・2023年6月16日 「世界最大14.1THz帯域での長距離一括光パラメトリック増幅中継伝送に成功 ~IOWN/6Gにおけるオールフォトニクス・ネットワークの波長資源拡張技術として期待~」 ・2024年9月 3日 「世界初、超長波長帯一括変換を用いた100テラビット毎秒超の長距離光増幅中継伝送に成功 ~IOWN/6Gに向けて単一コア光ファイバにおける既存技術の3倍超の大容量化へ~」 ・2024年11月 8日 「新方式の量子コンピュータを実現-世界に先駆けて汎用型光量子計算プラットフォームが始動-」 ・2025年4月25日 「IOWN APNにおいて、任意の場所から、必要な時だけタイムリーにAPNに接続する基本技術実証に成功」 【 NTT 技術ジャーナル特集 】 ・2019年3月号 「将来の大容量通信インフラを支える超高速通信技術 低雑音高出力パラメトリック増幅中継技術」 ・2021年1月号 「現実空間とサイバー空間をナチュラルにつなぐ境界としてのメディア・ロボティクス技術の取り組み スマートグラスに向けた可視光平面光波回路技術と集積化光源モジュール」 ・2022年6月号 「光を用いた次世代コンピューティングを実現するデバイス技術 高速光量子コンピュータ実現に向けた連続波・広帯域スクィーズド光源」
・どんな技術
量子コンピュータは量子力学の原理を計算に利用することで、さまざまな問題が超高速で解けると期待され、世界中で激しい開発競争が行われています。現在様々な方式が考案され、その中でも光の量子である光子を用いて計算する光量子コンピュータには多くの強みがあります。例えば、他の方式で必要とされる冷凍・真空装置が不要なため、実用的な小型化が可能です。また、時間的に連続的な量子もつれ状態を作ることで、集積化や装置の並列化なしに量子ビット数の大規模化ができます。加えて、光の広帯域性を活かした高速な計算処理も可能です。この方式は光通信技術とも親和性が高く、通信波長帯の低損失な光ファイバや光通信で培われた高機能な光デバイスを用いることができ、実機構築に向けた飛躍的な発展が期待できます。 しかしながら、この光量子コンピュータにおいて量子性の源となるスクィーズド光は生成が難しく、これまで光通信波長帯で動作する光ファイバ結合型の高性能な量子光源が存在しませんでした。また、高速光通信デバイスのすべてを、そのまま光量子コンピュータに使うことはできません。例えば高速な光通信用ディテクタは光損失が大きく、この損失で光量子状態が崩壊してしまうからです。そのため従来は、光損失が少ない特別に設計された低速なディテクタを用いて測定を行う必要がありました。これは光量子コンピュータにおいては動作速度を制限する要因となっていました。 そこで、光通信波長で動作する光ファイバ結合型量子光源や、光量子情報を保持したまま光を増幅可能な光パラメトリック増幅器の開発を進め、これまで適用できなかった超高速光通信テクノロジを光量子分野に適用するための研究を進めています。

・何が特徴?
光量子コンピュータにおいて量子性の源となるスクィーズド光は、非可換な物理量対の量子ゆらぎのうち、片方の量子ゆらぎ(量子ノイズ)が圧縮された状態の光です。また、スクィーズド光は偶数個の光子流であり、かつ量子ノイズが圧搾された特殊な状態の光で、量子もつれ状態生成の源となります。この光子数の偶奇性を利用することで量子誤り訂正が可能になることから、スクィーズド光は量子誤り訂正においても極めて重要な役割を担います。しかしながら、この光は生成が難しく、また光損失により容易に劣化してしまいます。そのため、これまで光通信波長帯で動作しかつ光の広帯域性を保ったまま高い量子ノイズが圧搾率をを持つスクィーズド光源は実現されていませんでした。我々の研究開発を進めている周期分極反転ニオブ酸リチウム(PPLN)導波路は、スクィーズド光の生成に必要な高い非線形光学効果と低損失性により、高性能な量子光源を実現しています。

・何ができる?
光通信デバイスを用いた安定的かつメンテナンスフリーな閉じた系において、現実的な装置規模での光量子コンピュータ開発を可能とし、光量子コンピュータの実機開発を大きく前進させることができます。図の構成では、一つ目のモジュールでスクィーズド光を生成し、二つ目のモジュールで光量子情報を古典的な光の情報に変換する光パラメトリック増幅器を用いています。この測定手法は従来のバランス型ホモダイン検波技術と異なり、量子信号を光のまま古典的な光の信号に増幅変換することができるため、圧倒的に高速な測定を可能にしています。これは将来の全光型量子コンピュータ実現にも適応可能な技術であり、テラヘルツクロック周波数で動作する圧倒的に高速な全光型量子コンピュータ実現に大きく貢献します。
