化合物半導体デバイス研究グループ

研究G紹介

IOWNなど将来ネットワークの高度化・高性能化をもたらすハードウェア要素技術として、高速性や機能性に優れた化合物半導体による光・電子デバイス技術、IC集積化技術、エピタキシャル結晶成長技術の研究開発に取り組んでいます。またこれらを通信用途だけではなく、センシング用途、パワーエレクトロニクス用途に技術展開しています。

・化合物半導体プロセス・実装・結晶技術
・超高速・高感度フォトダイオード技術

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研究開発成果

Y. Shiratori, T. Hoshi and H. Matsuzaki, "InGaP/GaAsSb/InGaAsSb/InP Double Heterojunction Bipolar Transistors With Record ft of 813 GHz," in IEEE Electron Device Letters, vol. 41, no. 5, pp. 697-700, May 2020, doi: 10.1109/LED.2020.2982497.
Y. Araki et al., "A Low-Loss DC-to-300 GHz InP/Si Interconnection Based on Wafer Level Packaging Using Chip-first/Facedown Process," 2024 IEEE/MTT-S International Microwave Symposium - IMS 2024, Washington, DC, USA, 2024, pp. 816-819, doi: 10.1109/IMS40175.2024.10600247.
Y. Yamada et al., "165-GHz Bandwidth, 0.53 A/W Vertical-illumination Photodiode Enabled by Interference-based Absorption Enhancement," in Journal of Lightwave Technology, doi: 10.1109/JLT.2025.3547437.
T. Shindo et al., "2.0-μm Wavelength Superstructure-Grating-(SSG-) Distributed Bragg Reflector Laser With Tuning Range of Over 50 nm," in IEEE Photonics Technology Letters, vol. 33, no. 13, pp. 641-644, 1 July1, 2021, doi: 10.1109/LPT.2021.3083840.

ピックアップテーマ:化合物半導体プロセス・実装・結晶技術

・どんな技術

IOWNにおける光通信・無線通信の高速・大容量化に向けては、光・無線通信用の送受信器に用いられる集積回路や、光を電気に変換する受光器の高速化が必要です。このような要求を満たすため、本研究グループでは、InP系化合物半導体を用いたヘテロ接合バイポーラトランジスタ(HBT※1)や高電子移動度トランジスタ(HEMT※2)、超高速フォトダイオード(PD※3)といったデバイスの高性能化を進めています。HBTやHEMTにおいては、サブミリ波帯・テラヘルツ帯で動作する回路まで実現しており、この技術を活用することで、他の超高速デバイス開発に必要な高性能計測装置や地球環境を観測する電磁波センサにも応用できることを実証しています。さらに、高出力な電磁波が必要な応用で活用が期待されるGaN系材料の研究など、通信を含めた様々な応用を見据えた化合物半導体電子デバイスの研究開発を進めています。
※1 HBT:Heterojunction Bipolar Transistor (ヘテロ接合バイポーラトランジスタ)
※2 HEMT:High mobility Electron Transistor (高電子移動度トランジスタ)
※3 PD:Photo Diode (フォトダイオード)

・何が特徴?

InP系材料やGaN系材料は一般的な半導体材料であるシリコンと比較して高い電子移動度や高い飽和電子速度、高い絶縁破壊電界といった優れた特長を有しています。そのため、これら化合物半導体を用いた電子デバイスでは、シリコン系電子デバイスでは到達し得ない、高速スイッチングや高出力動作が期待できます。
本研究グループは、上記の化合物半導体材料の結晶成長からクリーンルーム内でのデバイス作製、電気的特性評価に至るまで一貫して行える環境を有しています。さらにNTT研究所内に保有する回路設計技術や実装技術と組み合わせることにより、化合物半導体電子デバイスに関する包括的な研究開発を進めています。
このような強みを活かすことで、例えば0.2 µmエミッタ幅を有するHBTにおいては、電流利得遮断周波数、最大発振周波数がいずれも500GHzを上回る高い性能が得られています。また、PDにおいては、世界最高となる100 GHz以上、感度0.5 A/W以上を達成、 200 GBaudを超えた超大容量受信器の可能性を示すなど、世界トップレベルの化合物半導体デバイスを実現しています。

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・何ができる?

超200 Gbaud級の大容量光通信、サブミリ波帯・テラヘルツ帯を用いた超大容量無線通信やイメージングセンサ、GaN系デバイスを用いた超低損失電力変換器など、化合物半導体材料の強みを活かすことで、IOWNにおける高速・大容量な通信技術はもとより、計測・センサなど幅広い領域で、革新的な技術を創出することを目指して研究開発を進めています。


ピックアップテーマ:超高速・高感度フォトダイオード技術

・どんな技術

・インターネットトラヒックの増加により、高速の光通信に対する需要が高まっており、NTTでは革新的な光ネットワークを構築するIOWN構想を目指しています。ネットワーク機器を構成する半導体光デバイスにも高い性能が求められ、 "200G"のシンボルレートに対応するデバイスの研究開発が盛んにおこなわれています。
・NTT先端集積デバイス研究所では、200Gに対応するフォトダイオードのなかで、世界最高性能である0.5 A/Wの感度と70 GHzの効率帯域積を実現しています。

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・何が特徴?

・屈折率の異なる多層膜構造では、各層の厚さをわずかに調整するだけで光の干渉条件が変化し、反射率や吸収率が大幅に変化します。本研究では、高精度な半導体結晶成長技術を活用し、オングストロームオーダーで層厚を制御することで、干渉効果を最適化し、半導体での光吸収を高めることに成功しました。
・NTTの持つ最先端の半導体プロセス技術を用いることで、半導体の表面をマイクロメートル単位で半球状に加工。これにより、マイクロレンズをデバイス上に直接形成し、光の集光効率を高めることに成功しました。これらの技術は、今後の高感度な光デバイスの開発において重要な基盤となります。

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・何ができる?

・テラビット級の超高速光通信
・超高速の計測器