CMOSプロセッサのマルチコア化が進み、CMOSコア間での通信容量向上が求められている。現在の電気配線による通信容量や消費電力の限界を打破するため、様々なオンチップ光インターコネクションの研究が進められている[1]。我々はこのオンチップやチップ間の光通信用光源として、InP基板を用いて波長サイズ埋込活性層フォトニック結晶(LEAP)レーザを研究してきた[2]。今回CMOS集積への第一歩として、LEAPレーザをSi基板上に形成し室温連続発振を得た結果を報告する。
素子の作製手順は[3]に報告したものと類似している。結晶成長および横方向pn接合プロセスはInP基板上で行い、微小な埋込活性層を形成した。その後InP基板上にSiO2を成膜し、その表面を化学機械研磨(CMP)によって平坦化した。上記プロセスを経た2インチInPウエハを同径のSi基板にウエハ接合し、InP基板側を研磨およびエッチングで除去することにより、厚さ250 nmのIII-V薄膜をSi基板上に形成した。その後電子線リソグラフィとドライエッチングにより二次元フォトニック結晶を形成し、電極工程を経て素子の完成となる。試作した素子の模式図を図1に示す。
素子に室温においてDC電流を注入し、ウエハ上方から顕微鏡対物レンズおよび光ファイバで発光した光を評価した。光出力-電流-電圧(L-I-V)特性を図2に示す。我々はSi基板上においてもLEAPレーザの室温連続発振を実現し、発振しきい値電流31 µAを得た。このしきい値電流は、現時点においてあらゆるSi基板上半導体レーザの中で最小値となる。また素子は単一モード発振をしており、発振波長は1501 nmであった。これはLEAPレーザがInPウエハ上のみならずSi基板上でも動作することを示しており、我々は本成果がCMOSチップ上光通信実現に向けた重要な一歩と考えている。