所長挨拶

所長 小栗 克弥

物性科学基礎研究所
所長 小栗 克弥

 物性科学基礎研究所のルーツは、1985年のN T T民営化と時を同じくして発足したNTT基礎研究所(NTT Basic Research Laboratories: NTT-BRL) にあります。「電気通信・情報通信分野を中心として学術の発展・変革を誘発する世界的新知見・新概念を創出すること、ならびにその結果として他の基盤研究所群に次世代の技術の種を提供する」は、発足当初の基礎研究所の決意を表わした言葉です。この言葉は、「我々は、自然を深く理解し、可能性を拡げ、より良き世界への羅針盤を創る」という、今日の所員に呼びかけたNTT-BRLのスピリッツの中にも色褪せることなく息づいています。
発足より凡そ40年、電気通信・情報通信分野の技術は、飛躍的に進歩し、社会に深く浸透しました。その技術は、他分野へと拡大し続け、エネルギー、コンピューティング、セキュリティ、センシング、マテリアル、バイオ・メディカル、そして人工知能など幅広い分野との接点が次々と生まれており、その社会的重要性はかつてないほど高まっています。一方、この40年間で世界の政治、経済、社会の情勢も大きく変わり、基礎研究の担い手に対する期待、責任、カバーする範囲などの考え方も変化しています。こうした中、NTT-BRLでは、物理・化学・生物・数学・電気電子・情報・医学などを専門とする幅広い分野のプロフェッショナルが、物質科学、物性科学、量子科学に関する最先端テーマに取組み、技術の限界や知の拡大、そして社会への貢献に挑み続けています。そのためには、国内外の大学や研究機関とも幅広く共同研究を行い、「世界に開かれた研究所」として、志を共にする仲間たちとの強い絆作りもNTT-BRLの重要な営みです。

2025年のハイライトとして、私たちは、ワイル半金属と呼ばれる特殊な単結晶酸化物の薄膜でできた磁石SrRuO₃を用いた効率的な磁化反転、半導体で最大級の絶縁破壊電界と飽和電子速度を併せ持つと予測されているウルトラワイドバンドギャップ半導体Al Nを用いたミリ波帯高出力高周波トランジスタなどNTT-BRLが高品質化に成功した物質群の応用可能性を引き出しました。また、高速長距離量子通信技術における新しい光量子操作・プロトコルの理論を世に問い、量子技術の次の主戦場である量子インターネット技術の流れをけん引しました。更に、私たちは、Frontiers of Nanomechanical Systems(FNS2025)、SIP3量子技術ワークショップ「超高精度光周波数が切り拓く未来」、第53回量子情報技術研究会(QIT53)など、伝統ある国際会議・研究会から、我々が提案するワークショップまで主催・共催し、世界中の研究者、学生と私たちが、当厚木R&Dセンタに集い、交流し、友情を育む大切な場を提供しました。このような機会に加えて、我々が日常的に開催しているBRLセミナーでは、今年も36件を数え、国内外より訪問された素晴らしい研究者の方々より最新の研究をご紹介頂きました。そして、2026年1月には、NTT-BRL発足40年の節目のNTT物性科学基礎研究所40周年記念シンポジウム及び世界の著名な研究者から構成される第13回NTT-BRLアドバイザリボード会議を計画しています。このような営みは、私たち自身に、今日における基礎研究の価値や役割について深く思いを巡らせ、自らの研究活動を更に鍛え上げ、磨き上げる機会となるでしょう。

私たちNTT-BRLは、原点を忘れることなく、常に世界の未来を見据えています。
今後とも一層のご指導・ご鞭撻を賜りますようよろしくお願い申し上げます。