TsuKuBa 年史-TsuKuBa History -

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光・無線伝搬を統合した無線空間再現技術

2022年(令和4年)

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1. 研究背景
スマートフォンに加えて、IoT (Internet of Things) デバイスを代表とする多種多様な無線通信デバイスの普及が進んでいます。さらに、無線通信システムに要求される品質(大容量、低遅延、高信頼など)や利用シナリオもこれまで以上に多様化することが予想されています。このような将来の無線通信環境を高品質に提供するためには、各要件に応じた検証が不可欠となりますが、検証のためのリソース(時間やコスト等)は有限であるため、検証の効率化が求められています。既存の検証方法の1つに、特定の無線空間における無線通信デバイスの性能評価を目的としたOTA (Over The Air) 試験があります。しかしながら、OTA試験ではデバイス自体の物理的な動きに対する無線空間の変化の再現や、多様な利用シナリオの再現に課題がありました。

2. 技術の概要
無線空間再現技術は、屋外・屋内といった現在の無線通信の利用環境や、空・宇宙といった未踏領域の環境における到来方向・利得・フェージング等の無線特性を把握し、その無線空間を時間変動も含めて検証環境に再現するものとなります。具体的には、図1に示すように、無線空間再現技術は以下の3つの要素技術で構成されます。

① 光伝搬を活用した無線伝搬モデル推定
3Dプリンタ等で利用シナリオのミニチュアモデルを精密に作製するとともに、光を無線と見立てて可視化する技術となります。免許が必須となる無線による測定を行うことなく、伝搬減衰などの伝搬モデルの推定を簡易に行うことができます。

② 無線空間再現用シミュレーション
再現する無線空間に配置されたメタサーフェス反射板(RIS: Reconfigurable Intelligent Surface)、スマートリピータ、分散アンテナなどの無線特性を変化させる装置(無線特性可変装置)の制御を行うため、再現対象の無線空間と、再現する無線空間の2つの空間を結び付ける新しい概念のシミュレーションとなります。

③ 無線特性可変装置の協調制御
リアルタイムRIS制御技術を適用し、検証環境に複数設置した電波特性可変装置に対して、②の無線空間再現用シミュレーションで算出した制御パラメータを反映させることで、到来方向・利得・フェージングなどの無線特性を制御します。

無線空間再現技術の概要

図1 無線空間再現技術の概要

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