TsuKuBa 年史-TsuKuBa History -

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メタサーフェスによる伝搬路制御技術の考案と実証

2021年(令和3年)

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1. 無線空間をインテリジェントに制御する伝搬路制御技術
無線通信システムのさらなる高速大容量化を実現するため、ミリ波帯等の高周波数帯の活用が期待されています。しかし、電波の周波数が高くなるほど遮蔽による影響を受けて無線通信品質が劣化しやすくなります。そのような課題を解決するため、アクセスサービスシステム研究所ではインテリジェント空間形成というコンセプトの下、様々な無線中継技術を活用して無線伝搬路そのものを賢く制御する伝搬路制御技術の検討を進めています。伝搬路制御技術では、端末やセンサ等から取得・収集した情報(無線環境情報)を活用し、空間に多数配置された無線中継装置を動的に制御することにより無線通信品質を改善します。伝搬路制御技術の1つとして、Reconfigurable Intelligent Surface (RIS)*1反射方向の端末追従技術の考案と実証を行いました。

インテリジェント空間形成における伝搬路制御技術の概要

図1 インテリジェント空間形成における伝搬路制御技術の概要

2. Reconfigurable Intelligent Surface (RIS)を用いた端末追従技術の実証
RISを用いて電波の反射方向をダイナミックに制御し、端末に新たな電波伝搬経路を形成することにより、高周波数帯のカバレッジや無線通信品質の改善が期待できます。端末に対して電波伝搬経路を形成するためには、端末方向へ電波を反射させる必要があります。本技術では、無線環境情報として位置情報等の端末が観測可能な情報(端末環境情報)を低周波数帯の電波を用いて収集し、取得した情報を用いてRISの反射方向を制御します(図2)。端末環境情報は定期的に収集することもできるため、時系列解析等を用いて端末の動きを予測しながらRISの反射方向を制御することもできます。屋内実環境において、RISにより新たな電波伝搬経路を形成できるか、また、本技術を用いて移動端末を追従し続けることができるかを確認し、実際に実現可能であることを実証しています(図3)*2。

本実験における伝搬路制御システムの構成

図2 本実験における伝搬路制御システムの構成

RIS端末追従制御による受信電力の改善例

図3 RIS端末追従制御による受信電力の改善例

*1 Reconfigurable Intelligent Surface (RIS)は、メタサーフェス反射板の一種で電波の反射面の特性が可変であることが特徴のデバイスです。例えば、通常の反射板は特定の方向にしか電波を反射できないのに対し、RISは電波の反射方向を動的に切替えることが可能です。RISの制御次第では、特定の場所へ電波を集約させることや、様々な方向へ電波を反射させることも可能です(図4)。
*2 本実験は、株式会社NTTドコモ、AGC株式会社の協力のもと実施しました。

Reconfigurable Intelligent Surfaceの概要

図4 Reconfigurable Intelligent Surfaceの概要

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