周波数という有限のリソースを利用して構築する無線システムでは、利用者間で干渉調整を行うことが必須です。無線を利用した通信インフラを構築しているNTT事業会社も、自システムや他利用者のシステムの新設時に調整を行っています。これらの調整を行うために必要な干渉計算を、十分な無線の知識や業務経験がない人でも簡便に実施し、干渉を許容できるかどうか判定するソフトウェアを開発しました。
(1) 開発の背景
無線通信は電波が空中を伝わり、離れたところに到達するという仕組みを利用します。電波は有限のリソースであり、利用者はお互いの無線通信システム間の影響を考慮して、干渉を許容できる条件で運用することが求められます。このため無線通信システムの新設時には、各種無線通信システム間でお互いのシステムに与える干渉を計算して許容できるかどうか判定し、調整を行うことが必須です。
一方で、電波の伝わり方は周波数や送受信アンテナの位置関係によって大きく異なります。このため干渉計算を行うためには無線の知識やスキルが不可欠であり、計算ができる人材は限られています。NTT事業会社においても無線業務の経験者、有スキル者の絶対数は少なく、かつ年々減少してきています。
今後、基幹系無線システムの高度化や5Gサービスの開始など、多種多様な無線通信システムの導入が予測されることから、十分な無線の知識や業務経験がない人でも、簡便に干渉評価を行うことができる技術が求められています。
(2) 主な機能と技術ポイント
- ガイダンス機能
- 干渉評価の目的(自システムを保護する観点で干渉評価を行うのか、あるいは、他者システムと共用を進める観点で干渉評価を行うのか)に応じた検討指針、評価の進め方を提示します。
- 検討に用いる設定パラメータの持つ意味、パラメータ設定可能範囲、パラメータを選択した際に実施される内容等の各種解説および用語について説明します。
- 入力サポート機能
- NTT事業会社が運用する無線システムや無線局の諸元をDB化しています。検討対象とする無線システムや無線局をDBから選択して必要諸元を入力可能とすることで、諸元調査に要する稼働削減と入力ミスを防止します。
- 干渉許容可否判定機能
- 実際の干渉影響評価事例について、有スキル者がエクセル等を活用して案件毎に検討していた従来手法と比較すると、同じ計算結果を我々の事例では従来比0.5%の時間で導出できます。また、干渉の許容可否を自動判定し、結果を地図上に視覚的表示します。