無線周波数は有限であるため、無線LANを効率的に利用するには電波環境をエリア端まで把握して、無線機器を最適に設定する必要があります。一方、電波環境は人混みや設備レイアウト変更など外部の影響により変化するため、エリア全体の電波環境を継続的に把握することが不可欠で、それを簡易に実現することが課題です。
本技術では、複数のスマホ端末から無線LAN電波環境情報とスマホ位置情報を自動的に収集してクラウド上で統合して解析し、時々刻々と変化する電波強度のリアルタイム・マップを作成することで電波環境を見える化します。これにより、遠隔から、現地の無線不感エリアをリアルタイムに把握することが可能になります。
スマホ端末にインストールしたアプリケーションは、スマホの周辺にある無線LANアクセスポイント(AP)の信号と、BLE(Bluetooth Low Energy)ビーコン発信器の信号を自動的に収集し、その受信電波強度を測定してクラウドサーバに送信します。クラウドサーバでは、BLEビーコン発信器の情報をもとにスマホの位置を推定します。その位置情報と、AP信号の情報を自動で紐付けして時系列管理し、統合して解析することで電波環境のリアルタイム・マップを作成します。(図1)
電波環境マップを作成する際には、時間的・地理的に疎な収集データから、スマホ端末の移動方向を推定して電波強度データを補完します。また、電波干渉等により安定しないBLEビーコン発信器の信号に対して、誤検知保護段数処理により変動を緩和し、位置推定精度を向上しています。そして取得データの信頼度に基づき、用途別にマップを作成します。運用保守者向けには測定を効率的に行うための重点測定レコメンドマップ、エンドユーザ向けにはAPの電波強度が十分なおすすめ利用位置マップを作成可能です。(図2)