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電波伝搬損失推定ソフトウェア

2012年(平成24年)

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無線通信に関する高度な専門知識を持たなくても無線システム導入検討の際のサービスエリア設計を手軽に行うことが可能となる、電波伝搬損失推定ソフトウェアを開発しました。本ソフトウェアは広範囲な周波数帯をカバーしているため、様々な無線システムのサービスエリア設計が可能です。

  1. 地形情報を用いた伝搬損失推定
    本ソフトウェアでは、市販の3次元地図・建物DBと連携することで伝搬損失推定式の計算に必要となる地形情報を自動的に取得し、基地局-移動局/加入者局間の伝搬損失推定値を計算します。これによって、大地の起伏や建物の影響が考慮された面的な伝搬損失推定結果を視覚的に評価することが可能であり、準ミリ波帯等の高周波帯で重要となる伝搬路の見通し内(LOS)/見通し外(NLOS)判定も可能となっています(図1)。
    また、地形情報の取得を行う際に、高さ精度の良い3次元地図・建物DBを用いることで、実環境における測定値とよく一致する、より正確な伝搬損失推定を実現することができます(図2)。

  2. エリア計算結果

    図1 エリア計算結果

    地図精度の違いによる推定精度比較

    図2 地図精度の違いによる推定精度比較

  3. 対話型インタフェースによる伝搬損失推定式の選択
    利用する伝搬損失推定式は、周波数帯や都市構造に応じて適切に選択する必要があります。本ソフトウェアでは対話型インタフェースにより、目的とする周波数帯や都市構造に応じて適切な伝搬損失推定式が提示されるため、高度な専門知識を必要とすることなく利用することができます(図3)。
    本ソフトウェアには、NTTの継続的な寄与に基づいて国際標準化されたITU-R勧告P-seriesの推定式をはじめ、多様な伝搬損失推定式が搭載されています(表1)。
    これらの推定式によって、適用周波数はVHF帯(30MHz)~準ミリ波帯(20GHz)の広い帯域、適用距離は最大3000kmの長距離まで伝搬損失推定が可能となっています。
    このように本ソフトウェアの適用領域は広範囲であり、無線システムに依らない伝搬損失推定を行うことができます。

  4. 対話型インタフェース

    図3 対話型インタフェース

    表1 利用可能な伝搬損失推定式と適用範囲

    利用可能な伝搬損失推定式と適用範囲

  5. 伝搬損失推定フロー
    本ソフトウェアの伝搬損失推定は、推定を行う無線システム緒元を基に、送信アンテナと受信アンテナの地理的情報設定(アンテナ設置位置やアンテナ高など)、および計算に必要となる各種パラメータ設定(周波数や都市構造など)を行った後、伝搬損失推定式を選択することによって実行されます。
    本ソフトウェアには、様々な周波数帯や都市構造で利用できる多様な推定式が搭載されていますが、ユーザの入力した各種パラメータを基に対話型インタフェースによって適切な伝搬損失推定式が提示されます。そのため、高度な専門知識を必要とすることなく適切な推定式を利用可能です。
    推定手順をフロー化したものを下図に示します(図4)。

  6. 伝搬損失推定のフローチャート

    図4 伝搬損失推定のフローチャート

  7. 本ソフトウェアを用いた無線システム構築支援
    本ソフトウェアは測定を行うことなく無線システムのサービスエリアを容易に推定することが可能なため、様々な無線システムの回線設計に加え、緊急時の無線システム構築およびサービスエリア復旧の迅速化に役立ちます。
    主な利用シーンとしては下記のようなものが挙げられます。
    ① VHF帯(30MHz)~準ミリ波帯(20GHz)を利用する幅広い無線システムに対するサービスエリア設計
    ② 無線システム導入時の初期検討におけるサービスエリア構成や基地局設置位置の机上検討
    ③ 同一システム・異システム間の干渉検討
    今後はますます多様化が進展する無線システムのサービス展開に柔軟に対応できるよう、新たな伝搬損失推定式を搭載することにより、更なる対応周波数帯や対応環境の拡大に取り組んでいく予定です。

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