無線通信システムの広帯域化や多様化により、マイクロ波帯を中心として周波数資源の枯渇問題がますます深刻となっており、新たな無線サービスの導入や、トラヒック増大に対応する設備増設の障壁となっています。
そこでアクセスサービスシステム研究所では、複数システム間で同時に周波数共用を実現する技術としてスペクトル抑圧型無線伝送技術(図1)の研究を進めています。
以下のような提案方式により電波干渉を意識することなく、複数信号による柔軟な周波数共用を実現することができます。
- 送信側スペクトル抑圧処理
伝送方式として符号化OFDM信号を想定し、他信号との周波数共用を図るため、送信信号スペクトラムのうち一部の周波数帯域を抑圧します。スペクトル抑圧処理の有無により伝送速度が変わることはありません。 - 受信側スペクトル抑圧処理
受信信号において、送信側で抑圧したサブキャリアに対応する周波数帯域には、周波数軸上で隣接配置した他信号が到来し、伝送誤りの原因となります。
そこで誤り訂正復号を行うことで干渉の影響を低減しますが、1つ問題があります。誤り訂正復号には尤度と呼ばれる伝送ビット(0または1)の確からしさの情報が用いられますが、干渉波の受信電力が大きい場合、抑圧サブキャリアに対して絶対値の大きな尤度が誤って算出されてしまい、適切ではない誤り訂正処理をすることになります。
そこで受信機において、抑圧サブキャリアで算出する尤度を最も曖昧な値に置換する、FEC尤度マスクを適用します。
最も簡単な例ではゼロ置換となります。この簡単な処理により、正しく伝送されたサブキャリアを活用した誤り訂正能力を借りて、任意の干渉波の影響を低減することが可能となります。
計算機シミュレーションの結果、提案技術により周波数利用効率を1.2倍強に改善できることを確認しました(図2)。