無線アクセスの広域化に有効なマルチホップ無線システムが注目を集めています。マルチホップ無線システムは、送受信局間の無線伝送を複数の中継局を介するバケツリレー型の伝送方式により、伝送距離を長距離化することが可能となります(図1)が、ホップ数が大きくなると伝送レートが低下するという課題がありました。
そこでアクセスサービスシステム研究所では一種の符号化技術をマルチホップ無線システムに組み込んだ無線ネットワークコーディング技術を提案しています。
無線ネットワークコーディング(WNC)では、ノードA→B、ノードB→Aの双方向通信において、中継局が各ノードの伝送信号を排他的論理和(XOR:eXclusive OR)により1信号にまとめることで、従来4タイムスロット必要だった中継処理(図2)を、3タイムスロット(図3)に短縮することができます。
図2 WNC 技術を用いない場合の通信手順 |
各ノードは中継信号と自身が送信した信号とのXORを取ることで、本来の受信信号を得ることができます(ネットワーク復号)。また、伝送品質を改善する技術として中継局を介さずに直接到達した微弱な受信信号をネットワーク復号後の信号と合成するダイバーシチ合成技術、中継局で誤りを検出した際には当該パケットの復調前の信号(受信信号そのもの)を他方の中継信号に重畳して伝送するハイブリッドNC(HNC: Hybrid NC)技術を併せて提案しました(図4)。
計算機シミュレーションによりマルチホップ無線システムのスループットを35%改善できることを確認しています(図5)。