NTTでは、1990年代の半ばより、マイクロ波帯無線LANの研究開発・実用化に合わせて、屋内外アクセス環境におけるマイクロ波帯の電波伝搬特性の解明に取り組みました。
マイクロ波帯はそれまで送受信局間に見通しの確保できる中継系にのみ用いられていた周波数帯であったため、送受信局間に見通しの無い状態が基本となるアクセス環境におけるマイクロ波帯の電波伝搬特性は未知の領域でした。
マイクロ波帯の電波伝搬特性を明らかにすることは、マイクロ波帯無線LAN自体、さらには無線LANを用いたNWAやFWAを検討する上で、大変重要なことでした。
アクセスサービスシステム研究所では、2GHz帯~26GHz帯のマイクロ波帯の周波数において、周波数横断的な電波伝搬特性の検討を進めてきました。
検討は将来の無線LANシステムの普及を想定し、屋内は戸建て住宅、集合住宅、オフィス環境、地下街、病院等、屋外については、市街地、住宅地、郊外地等、さまざまな環境において電波伝搬実験を行うことで、実環境におけるマイクロ波帯電波伝搬特性の検討を行いました。
得られた実験結果から開発したマイクロ波帯屋外電波伝搬損失推定法(図1)、地下街伝搬損失推定法については、ITU-R(国際電気通信連合無線セクタ)勧告に採択されています。
さらには、これらの伝搬特性推定法を用いて無線LANを用いた屋内外NWA/FWA回線設計法を確立し、無線LANシステムを用いたワイヤレスアクセスサービスの初期検討を行うにあたり必要となる、無線回線設計・無線ゾーン設計・干渉検討を可能にしました(図2)。