センサネットワークは、携帯電話や無線LANなどの人を対象とするブロードバンド無線ネットワークと異なり、センサやアクチュエータなどのモノが対象となるため、装着する無線端末の省電力、小型化、低コスト化が必須です。
そのため、2005年以前では短距離無線通信による実現が主でした。
この場合、カバーエリアが数十m程度の狭エリアに限定されるため、適用領域が倉庫内在庫管理、物流ゲート通過チェック、販売店購買履歴管理などの局所的なエリアに限定されていました。
NTTでは、このセンサネットワークの適用領域の局所的エリアから広域エリアへ向けて、広域ユビキタスネットワークを研究開発してきました。
具体的には2005年から2010年1月まで未来ねっと研究所でコア技術を確立し、2011年2月にアクセスサービスシステム研究所でシステム化の研究開発を推進してきました。
広域ユビキタスネットワークは、無線端末の省電力化、小型化、低コスト化は維持しながら、基地局側を高性能化して、数km以上の長距離伝送を実現し、この基地局を面的展開することによって、あらゆる場所でのモノとネットワーク通信できる広域センサネットワークです(図1)。
これにより、ガス・電力などの遠隔検針、温度・花粉などの環境情報の監視・観測、不特定多数製品の遠隔メンテナンス、紛失物品の検索など、センサネットワークサービスの可能性が無限に広がります。
これらの実現に向けて、高層ビルなどの電波遮蔽を回避するために3方向の複数基地局から同一情報を送受信して数km以上の長距離伝送を可能としたサイトダイバーシチ技術(図2、図3)、数kmのカバーエリア内にある数万局以上のモノを収容する超多元接続技術、携帯電話のように高頻度な充電作業が難しいモノに対して数年間以上の電池駆動を可能とする無線端末省電力化技術などを開発してきました。
また、総務省からユビキタス特区事業「次世代無線ネットワーク」(2009年)やネットワーク統合制御システム標準化等推進事業「環境負荷低減を実現するためのワイヤレスシステムに関する要件」(2010年)の指定を受け、さまざまなパートナーとともに広域センサネットワークサービスのアプリケーション実証実験(図4、図5)も推進してきました。
そして、最終的にはこれらの成果を2012年に成果登録しました。