NTTアクセスサービスシステム研究所ではクラウドサーバリソース最適制御技術の研究開発を進めてきました。2021年3月、業界団体European Telecommunications Standards Institute (ETSI) Experiential Networked Intelligence Industry Specification Group (ENI ISG)において、クラウドサーバリソース最適制御技術の「Intent(意図)」に応じてリソースを設計するアーキテクチャ、API要件、関連ユースケースを反映したドキュメントを国際標準として公開されました。 さらに、Intel、INTRACOM TELECOM、NTT-ATと連携し、クラウドサーバリソース最適制御技術を仮想デスクトップサービス、仮想ネットワークサービスに適用し、標準化PoCとして実証しました。
1. 研究背景
ICTサービスの高度化と拡大の進捗にあたって、ユーザ体感品質要件の満足が重要な要素となります。しかし、従来のサービス技術者の経験頼りもしくはシステムパフォーマンスベースでのリソース設計・制御では、技術者に高い経験・スキルレベルが必要となり、また、ユーザ品質要件・利用状況に則したサービス提供が困難となり、余剰にリソースを用意する必要がある等の課題が存在します。NTT研究所では、ユーザ体感品質要件を「Intent」として取り扱い、「Intent」を満たす最適なクラウドリソースをプロアクティブに自動算出するクラウドサーバリソース最適制御技術の研究開発に成功しました。
また、「Intent」ベースの管理方式に関する議論が近年、国際標準化団体で活発に行われています。NTTはクラウドサーバリソース最適制御技術において、「Intent」ベース管理方式におけるアーキテクチャ及びAPI等の標準化を進め、クラウドサーバリソース最適制御技術を容易に標準準拠のプロダクトと接続可能としています。
2. 活動概要
2-1 ENI 008 Intent Aware Network Autonomicityの制定
クラウドサーバリソース最適制御技術は、環境から収集したログデータからリソース設計に必要な因果関係をモデルとして抽出し、ユーザが指定した「Intent」に対して、モデルを用いて各リソースパターンに設定する際に、ユーザ体感品質への影響を予測し、「Intent」を満たす最適なリソースを算出する技術です。「Intent」を処理するアーキテクチャをETSI ENI会合に提案し、ENI 008に反映しました。「Intent」ベース管理機能をマルチベンダーと接続可能にするため、外部インタフェース要件を寄書しました。また、上記のアーキテクチャ及びインタフェースをベースとした仮想ネットワーク機能の適用ユースケースを反映しました。審議と制定を経て、該当標準ドキュメントは2021年3月に正式にリリースされました。
2-2 標準化PoC - Intent-based Cloud Management
NTTがリーダーを務め、Intel、INTRACOM TELECOM、NTT-ATがメンバーとして参加する標準化PoC - Intent-based Cloud Managementを2021年6月に立ち上げました。PoCでは以下の2つの適用シナリオを想定し、クラウドサーバリソース最適制御技をベースとしたIntent-based Cloud Managementを実装しました。
(1) 仮想デスクトップサービス Virtual Desktop Infrastructure (VDI) 管理者の「Intent」であるユーザ体感品質要件に応じて、Intent-based Cloud ManagementはVDIインスタンスのリソース配置を決定します。
(2) 仮想ネットワーク機能サービス Network Function Virtualization (NFV) の管理者のNFVパフォーマンスおよび省エネルギ要件に基づいて、Intent-based Cloud Managementが仮想ネットワーク機能を収容するサーバのCPU、 メモリーへの設定値を決定します。
PoCの実装結果をETSI ENI第21回全体会議にて報告し、デモを実施しました。PoCが成功したことによって、標準に反映した「Intent」を処理するアーキテクのフィジビリティを証明し、また外部パートナーと連携して技術の価値の拡大が期待できます。