通信ネットワークに対する高い品質・信頼性が求められる法人ネットワーク向けに、新たに提案する機械学習モデルの活用によって、高い通信品質と経済的な設備設計を両立させる帯域推定技術を確立しました。
お客様に通信サービスを提供する際には、各サービスに応じた品質を実現します。そのためには、トラヒック量に応じてネットワーク設備を過不足なく用意することが重要です。また、高精度なトラヒック予測に基づき適正な設備量(帯域)を設計可能とすることは、設備投資を抑制することにも寄与します。
図1に従来のトラヒック変動と帯域推定手法を示します。縦軸に帯域を、横軸に時間を示しています。灰色線は通信トラヒックの変化、青線は従来手法(線形予測)による推定結果を示しています。これまでは過去と将来でトラヒックの増加傾向が概ね一定であったため、従来手法でも適正な帯域を推定することができました。
しかし昨今は、サービスやアプリケーションの多様化、ユーザ数の急増によって、トラヒック変動の拡大、不連続な変化が発生し、トラヒックの傾向を捉えにくくなってきています。このため、過去のトラヒック傾向のみに基づく従来手法(線形予測)では、高精度な帯域推定が困難になりつつあります。
そこでNTTでは、過去のトラヒック傾向だけでなく、トラヒック変動に相関する関連情報(特徴量)を予測処理へ組み込むことにより、精度を高めることを目指しました。また、増大する情報を効果的に計算するため、帯域予測に最適化した機械学習モデル(SVAE:Supervised variational autoencoder)を新たに確立しました(図2)。
図3に今後発生が想定されるトラヒック変動と帯域推定手法を示します。図3のようにトラヒックが不連続な変動を示した場合、過去のトラヒックにのみ基づいた従来手法では推定精度が低下してしまいます。これに対して確立した帯域推定手法では、機械学習とともにトラヒック変動に相関する関連情報(特徴量)を用いることで、大きなトラヒック変動にも追随できるようになります。
新たな帯域推定技術を活用することにより、従来手法では扱いにくかったトラヒック変動に対しても予測精度が高まり、各サービスに応じた通信品質の実現、および、効率的な設備投資の両立に対して貢献します。