SAR衛星による道路陥没予兆検知技術

2025年(令和7年)

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近年、社会インフラの老朽化に伴い、道路陥没事故への対策が重要な課題となっています。一方で、道路管理者が活用できる人員や予算には限りがあり、広域にわたる道路を高頻度で点検することは容易ではありません。現在は、下水道など陥没の原因となる地下構造物へ立ち入って行う目視点検や、地上からの地中レーダ探査が実施されていますが、これらの方法は調査範囲が局所的であり、人的・費用的負担も大きいため、面的に広く道路状態を把握するには限界があります。
そこで、現地作業を伴わずに道路陥没リスクの高い箇所を効率的かつ経済的に絞り込むことを目的として、合成開口レーダ衛星(SAR衛星)※1が取得する電波データから道路陥没の予兆を直接捉える手法を実証しました(図1)。本技術は、道路表面だけでなく、アスファルト舗装内部やその下部で生じる変化に対応した電波の反射・散乱成分に着目し、道路下で進行する異常を衛星データのみから把握できる点に特長があります。道路陥没に至る前には、(i)地下空洞の形成、(ii)地盤の乱れ、(iii)地表面の凹凸、という変化が段階的に発生します。本技術では、複数偏波※2のSAR観測データを解析し、それぞれの変化に対応する散乱※3成分を抽出します。さらに、異なる時期に取得した衛星データの差分を用いることで、陥没予兆の進展度合いを継続的に監視します。

概要

図1 概要


技術のポイントは、道路陥没予兆と電磁波の散乱成分との対応関係に基づき、物理モデルに基づく検知アルゴリズムを確立した点です(図2)。地下空洞が形成される段階では、道路内部の境界面などで電波が往復する「2回反射」が現れます。次に、空洞の進展に伴って周辺地盤が乱れると、土壌や砕石のような不均質な内部構造に由来する「体積散乱」が現れます。さらに、変状が地表面に近づいて路面に凹凸が生じると、表面の粗さに対応した「表面散乱」が強まります。このように、電波の散乱成分を状態変化と対応づけることで、道路陥没の予兆を電波から直接読み取ることが可能になります。

衛星データで捉える散乱と道路陥没予兆の関係

図2 衛星データで捉える散乱と道路陥没予兆の関係


本技術の有効性は、道路下空洞の点検データとの突合により検証しました。その結果、衛星データのみを用いて道路下空洞を検出できることを確認しています。従来は車載型地中レーダにより道路下空洞の位置を特定していましたが、その一部を本技術で代替することで、コストを約85%削減できる見込みです。また、SAR衛星は地球を周回しながら定期的に同一地域を観測できるため、数年ごとの現地点検では見逃しやすい進行中の変化を、より高頻度に把握できる可能性があります。今後は、地下光ファイバーを用いた深部モニタリング技術など、特性の異なる監視技術と組み合わせることで、道路陥没の予兆をより確実に検知する運用へ発展させることが期待されます。

※1 合成開口レーダ衛星(SAR衛星)
人工衛星に搭載されたレーダで地表に電波を照射し、戻ってくる電波を解析して画像化する衛星のことです。雲や夜間の影響を受けにくく、広域観測に適しています。
※2 偏波
電波の振動方向のことです。本技術では複数の偏波情報を解析することで、道路内部や地表面の状態の違いを読み分けています。
※3 散乱
電波が物体に当たった際に、さまざまな方向へ飛び散って戻る現象です。SAR衛星は、この散乱の強さや成分を解析することで、地表や地中近傍の状態を把握します。

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